第12話 悪役王子、二度の過ちを犯す





「ふごおおおおおおおおッ!!!!」


「うーん。あたしの力で性欲を最大限に抑えてこれかい。坊や、あんたどういう性欲してんだ」



 夜。

 俺はベッドの上で一人悶々としていた。


 アデウスの能力で性欲が抑えられているはずが、ちっとも我慢できない。

 なんというか、形のない貞操帯を付けているような感覚なのだ。


 それが辛く、苦しい。


 とにかく今すぐソフィアとどちゃくそエロいことがしたい。


 しかし、ソフィアはより強力な悪魔を召喚したいと言って夜中まで魔力の鍛錬をしている。


 今晩は一人で慰めるしかない。



「うぅ、ソフィアぁ」


「なんだい、男が情けない。仕方ないね、ここはあたしが一肌脱いでやろう」


「……俺、兎のぬいぐるみなんか見ても興奮できない……」



 ぬいぐるみをネタにできる人がいたら、その人はきっと人類の一歩先を行く存在だ。


 俺はその領域に辿り着いていない。



「違うよ。こうするんだ、よっと」



 次の瞬間、アデウスがぼんっと白い煙に包まれた。


 うお、な、なんだ?



「え、ソフィア?」



 白い煙が晴れると、そこにはソフィアがいた。


 しかも、バニー姿のソフィアだ。

 それもただのバニー姿ではなく、いわゆる逆バニー。


 破壊力がダンチだった。



「どうだい? よく出来てるだろ? これでもネタにして――」


「ソフィア!!」



 は目の前の逆バニーソフィアをベッドに押し倒した。



「!? ちょ、ちょいと待ちな!! あたしはソフィアじゃ――」


「ソフィア、愛してるー!!」



 俺は間違いを犯した。


 でも冷静に考えてみて欲しい。今回に限っては俺は悪くない。


 だって、目の前に大好きな人の逆バニー姿が現れたらどう思う?


 それも性欲を無理矢理抑えられている状態で、知能指数が低下している時に。


 ね? 俺、悪くないよね?



「はあ、はあ、お゛っ、はあ……」


「……やっちまった……」



 ベッドの上で逆バニーソフィアに擬態したアデウスが痙攣している。


 自分の下半身直結型の頭が憎い。


 まさか、婚約して一ヶ月も経たずに浮気してしまうなんて……。


 いや、アデウスは悪魔だし、セーフという可能性も微レ存か? ……駄目だよな。



「アデウス、いや、アデウス様!! どうかこのことはソフィアには内緒にしてください!!」


「……こ、こんなこと、ご主人様に知られたらあたしが消されちまうよ」



 俺はホッとする。良かった。良かった!!



「ったく、ご主人様も大変だねぇ。このあたしですら危なかったよ」


「え、あ、うん」



 めちゃくちゃ感じまくってたと思うけど、あまり言わないでおこう。



「ふぅー、にしても暑いねぇ」


「……」



 ソフィアの姿をしたアデウスが、手でパタパタと自らを煽る。


 その姿が如何にも煽情的で、俺の下半身が反応を示した。


 い、いかんいかん。


 また脳が下半身と繫がる前に、ここは退散しよう。

 そうだ、ソフィアが魔力の鍛錬をする様子でも見に行こうかな。


 そう思って部屋を出た俺は、ある人物に遭遇する。



「あ……」


「え、シフォン先生?」



 廊下にシフォンがいた。


 ただ、どうにもいつもと様子が違った。


 壁に背を預けて座り込み、自らの股ぐらを手で弄っている。


 俺はすぐに察した。


 シフォンが俺とソフィア(偽)の行為を覗いて、一人遊びしていたのだと。


 俺の脳と下半身が直結する



「あ、こ、これは、違っ――」


「先生、先生!!」


「へぁ!?」



 そして、俺は一晩の間に二度の間違いを犯した。


 自らに魔術を教えてくれている人物に、俺は襲いかかってしまったのだ。


 冷静になった時には、もう全てが終わっていた。


 目の前には呼吸を乱して頬を赤く染めるシフォンと、俺たちを「うわあ」って顔で見るぬいぐるみ形態のアデウス。



「あ、あの、シフォン先生、そ、その……」


「……今晩のことは、お互いに忘れましょう」


「……は、はい……」



 シフォンがそう言って気を利かせてくれたものの、やっちまったことに変わりはない。


 もしデキちゃったりしたらどうしよう……。


 素直に謝ったら、ソフィアは許してくれるだろうか。

 ……いや、許されようって考えが間違いかな。


 今回のことは墓場まで持って行こう。うん。








 それからしばらくの月日が経ち。


 俺はシフォンに呼び出された。


 以前のこともあって緊張したが、シフォンは普段通りに接してきた。


 互いに忘れようというのは本当だったらしい。


 では何故、シフォンが俺を呼び出したのかと言うと。



「アノン王子。魔術学園に興味はありませんか?」


「え? 魔術学園?」



 俺はシフォンからの唐突な内容に、ただ困惑するのであった。






――――――――――――――――――――――

あとがき

作者の一言

ギルティ!! アノン、てめぇは地獄に堕ちろ!!


「有罪!!」「ソフィアという美少女がいながら!!」「でも逆バニーソフィア(偽)と魔女っ娘先生なら仕方ないよな!!」と思った紳士の方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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