第38話 オッサン、黄金の騎士と再戦する
「決着をつけるぞ金ピカ野郎」
「兜を壊した程度で勘違いされては困ります。黄金級使い魔の力、見せてあげましょう」
俺とライトナイツは同時に足を踏み出す。
一歩、一歩、距離が縮まり、お互いの間合いに入った瞬間、スキルを発動する声が響いた。
「【変身】!」
「──【変身】」
俺の腕がハンマードリルに変わり、ライトナイツの腕は突撃槍になった。
部位変身は難しいと聞いているが、こいつの変身スキルもかなりのレベルのようだ。
間髪を入れず、武器同士が至近距離でぶつかり合う。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉッッ!」
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッッ!」
高速で刺突の連撃が繰り出され、目が眩むほどの火花が飛び散る。速度ではまったく互角だが、武器の性能は俺の方が上だ。
魔力で強化されたハンマードリルの回転が、ギャリギャリギャリと突撃槍を、鉛筆を削るように、金属がえぐれていく。
「クッ、下品な武器ですね。ならば──」
ライトナイツは後ろに飛んで距離を取る。やっぱりこいつは遠距離タイプのスキルが得意なようだ。
何度も見たあれをやる気だな。
「蹴散らせ。魔力供給。【スキル・破壊強化】」
「あなたは目障りです。【虹の十輪光閃】」
ハインツの魔力供給で破壊力を増した虹色のビームが、ライトナイツの十指から発射される。
命中すれば問答無用で消滅させられるスキルだが、こっちも対策を考えていないわけじゃない。
「させませんわ! 魔力供給。【スキル・拡散強化】!」
「二度も三度も同じ手をくらうかよ。【変身】!」
「なっ、なんですと!?」
俺の両腕が濃い水蒸気に変化すると、瞬く間に広がっていく。ライトナイツのビームは減衰し、そのまま床に直撃して穴を開けた。
ネットで見た雑学だが、本当に成功してよかった。
こんな知識どこで使うんだよと思ったが、人生ビームで撃たれることもあるもんだな。
「馬鹿な……我のスキルがそんなもので……」
「今度はこっちの番だな。【変身】」
俺の腕と胴の一部が混ぜ合わさり、ガトリング砲が形成される。
魔力の消耗が大きい武器だが、リーシャが近くにいるなら気兼ねなく使えそうだ。
砲身が回転を開始し、大口径に弾丸を上乗せして発射する。雨のように弾丸が降り注ぎ、鎧が激しい金属音を奏でた。
「が、がががががががががががががアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああぁッッ!」
互いに魔力を纏っているなら、近代の武装に中世の鎧が勝てるはずがない。黄金の鎧は見るも無残な穴だらけになった。
空いた穴からはドロリと漆黒の魔力が漏れ出る。まるで生ゴミのような腐臭が俺の鼻を刺激した。
見た目を煌びやかだが、相当にろくでもないものが詰まっているようだ。
「かっ……なんだその武器は……あり得ない……ありえないイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィッッ!」
「ビーム撃ってくるやつが言うな。これ以上動くとマジで死ぬぞ」
「黙れ! 我に上から目線で語りかけるな! ド低級のカス使い魔が!」
ライトナイツはボロボロになりながらも、辛うじて立っていた。口から罵倒しか出てこないところを見ると、こっちが追い詰めていることは確かだ。
あれだけ強力だったスキルも使ってこない。
このまま終わってくれればいいんだが……。
「これ以上無様をさらすな。魔力供給。【瞬間治癒】」
「ハインツ様……」
「使い魔同士の戦いは完全に肉体を破壊しないと終わらない。まったく面倒なものだ」
まあそうくるよな。
先にハインツをどうにかしないと、泥試合になりそうだ。
そう考えていると、相手も動いてきた。
考えていることはこっちと同じか。
「キミもそう思うだろ? リュウジくん」
「ああ、お前をぶちのめした方が早そうだな」
「さて仕切り直しといこ──、限定召喚。【深淵より這いよる手】」
「てめえ……!」
ハインツが床の絨毯に触れると、急速に魔力が高まり発光した。絨毯の裏にあらかじめ召喚陣を描いていたと、気づいた時には遅かった。
「なっ、なんですの!?」
リーシャの足元から触手が出現したのだ。俺の位置からでは間に合わない完璧なタイミング。
だが、ポーンリザードに奇襲を受けた時のような動揺はない。今回は頼れる護衛がついている。
「会話の最中に不意打ちか。貴様らしい手口だな」
魔術師狩り──いや、クラリッサの剣が目にも止まらぬ早業で、すべての触手を切断した。
彼女の強さは戦った俺が一番よくわかっているからな。
「くっ、失敗作が邪魔をっ!」
「あ、ありがとうございますわ!」
「リュウジ! ライトナイツは完全に回復していない! さっさと決めろ!
言われて魔眼を使うと、鎧の穴は塞がっていても、魔力の漏出は止まっていない。変身で漏れた魔力を透明化させているだけだ。
「銅級使い魔ごときが……我を舐めるなアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
ライトナイツが再び腕を突撃槍に変身させ、連撃を繰り出してくる。だが、先ほどのようなキレはまったくない。
俺はネズミに変身すると、素早く後ろに回り込む。
「魔力供給。【スキル・拡散強化】!」
「終わりだ。そこでじっとしていろ」
「ご……ごがあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
腕を複数の鉄杭に変身させ、ライトナイツの鎧を背中から刺し貫く。そのまま昆虫標本のように、床に張り付けにした。
これで完全に動きは封じた。
勝負あり、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます