第44話 ダンス with 魔王

 オレは魔王ドナと、キャンプファイアーを囲んでダンスをする。


 ヴィル女の寮生も、それぞれパートナーを連れて炎を囲んでいた。


「どうだった、カズヤ? ヴィル女の文化祭は」


「楽しかったぜ。学生時代は、こんなに楽しいなんて思わなかったな」


「お前はどんな学生だったんだ?」


「少なくとも、キャンプファイアーで女の子と踊る甲斐性なんて、持ち合わせていなかったな」


 あえて、友だちを作らなかったフシもある。色々とめんどくさくて。どちらかというと、せっかくの祝日なのにバイトに入れないのが痛かった。


「……まったく。昔から、現金な男だったんだな?」


「まあな」


「今日は最後まで、楽しんでくれ。ほら、次の相手が来たぞ」


 ドナが、オレから手を離す。


 続いて現れたのは、アンネローゼだ。


「カズヤさん。今日はおいでくださって、ありがとうございます」


「いやなに。お邪魔じゃなかったか?」


「とんでもございません。楽しく回らせていただきました。殿方とおデートなんて、魔王をしていればレアイベントですもの」


 アンネローゼは、本当に興味のあることにはド直球だ。行動力の化身とは、こいつのことを言うんだな。


「では、続きをお楽しみに」


 シルヴィアが、アンの次にオレの手を取る。


「カズヤさん、もっと話したかったけん」


「オレもだ。今日は楽しかった」


「結局、からあげに負けたんじゃ。今日は慰めてもらわんといかんね」


 文化祭のMVPは、生徒会のからあげだったという。


「あはは……」


「冗談じゃ。まあ、試合に負けて勝負には勝ったけん」


「どういう意味だ?」


「フフ。教えてやらんっ、と」


 ドロリィスの方へと、オレの背中を突き飛ばす。


 まだドロリィスは、ピーターパンコスチュームのままである。


「演劇、午後の部で見させてもらった。すげえな」


「ありがとう、カズヤ。ワタシも、晴れ姿を見てもらって、ありがたく思う」


 舞台に立つドロリィスは、様になっていた。まさか、セットの上で本当の格闘戦を行うなんて思わなかったから、驚いたが。


「悪いがユーニャ。フィーラを譲ってもらおうか」


「わかったわよ」


 ドロリィスがオレを、フィーラのもとまで魔法で飛ばした。


「フィーラ、よく自分で決断したな」


「はい。わたしにもできることがあると、カズヤさんが教えてくれたから」


「オレは、なにもしていないぜ」


 決断したもの、交渉したのも、フィーラだ。

 オレは、提案をしただけ。


「シノブちゃん、シメはお願いします」


「ういー」


 最後に、シノブと踊る。ギャルコスのまま、シノブはオレの手を取った。


「今日はありがと。フィーラのことも、あたしのことも」


「いいってことよ。また困ったことがあったら言えよ」


「うん。あのね、カズヤ」


 シノブがなにかいい終わる前に、空に花火が上がる。

 ダンスの時間は終わって、文化祭はお開きに。


「どうした?」


「ううん。なんでもない」






 翌日、シノブの要塞が完成した。

 オレを乗せて、スパウルブスに殴り込みに行くという。

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