第五章 フリーター、大魔王からJKのダンジョンを守る ~親娘対決編~

第29話 ドロリィスのダンジョン

「おお、来たか」


「待っていたよ! ドナ・ドゥークー。それにカズヤ」


 ダンジョンの入り口には、ドロリィスとツィナーが立っていた。


 二人は崖の灯台を改造したダンジョンを、共同で経営している。最初こそわだかまりのあったが、案外仲がいいらしい。


「先に、ワタシが担当する灯台の中を案内しよう」


 灯台の門を開き、ドロリィスが中を見せてくれた。


「外観の割に、大きいんだな」


「サイズは大きくした。やはり、戦闘をするからな」


 さっそく、冒険者がモンスターと戦っている。


 専用の通路を使うので、オレたちに被害は及ばない。


 冒険者が戦っているのは、キメラである。ライオンサイズの怪物に、ヤギや蛇の頭がついていた。


 ライオンが近接で剣士を牽制して、尻尾の蛇が魔法を唱えて後方の射手に毒の矢を放つ。


「実力は、拮抗しているようだな」


 ウンウンと感心するような仕草をして、ドロリィスは更に上の階へ。


 一階一階に、凄腕のモンスターを配置している。上がれば上がるほど、魔物のランクも上がっていく。


「調子はどうだ、デーモンロード? お前のところまで上がってこられたやつはいるのか?」


「うむ。大事ない。今のところ、わらわの元までたどり着いた猛者はおらぬ」


 最上階手前に、金ピカのヨロイを着た趣味の悪い騎士が。剣を地面に突き刺し、偉そうにふんぞり返っている。特徴的なのは、背中にも腕があることだ。しかも四本。


「来たところで、わらわのハイパーウルトラフルスイングの前にひれ伏すであろう。くくく」


 まったく笑っていないデスマスクの顔で、デーモンロードとやらは笑い声を上げる。背中の一際太い腕で、モーニングスターを担ぎながら。


「おそらく、問題ないだろう」


 続いて、灯台を降りて下の崖ルートへ。


「こっちは、トラップ宝箱ばかりを設置した」


 盗賊や詩人、賢者などの知恵者を相手にしたダンジョンらしい。


 効果なアイテムを手に入れられる代わりに、負けると入り口に強制送還される。さっきも、賢者タイプの冒険者が追い出された。


「上には脳筋ばかり配置して、こちらは知恵で勝負してもらうことにしたのさ」


 さっき最上階にいたデーモンロードは、ツィナーの配下らしい。


 ドロリィスは、最下層の豪華なお宝を配置しているという。


「ズル賢いツィナー向きかなと思ったのだ」


「待ちなよ、ズルいっていい方はないんじゃないかい?」


「そうカッカするな。褒めているのだ」


「どうだか」


 ドロリィスとツィナーが、軽口をたたき合った。

 本質的に仲良しなため、安心して見ていられる。


 ダンジョンを出ると、フィーラがオレたちを呼びに来た。


「みなさん大変です! うちの女子寮に、シルヴィアさんのお父上を名乗る方が!」

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