第28話 カズヤからの提案

「シルヴィアは道の駅の管理が大変で、魔王業務まで手が回らない。そこで、ダンジョンの管理はユーニャに任せたいと言ってきたのだ」


 ドナが、オレに代わってユーニャさんに説明をする。


「別に構わないわ。けれど、それではペナルティになりません!」


「いや。ペナルティだ。お前に選択権はないからな」


「私に、ダンジョンを探すな、と?」


「そういうことになる」


 魔王にとって、ダンジョン選びは一つのステータスだ。しかし、ユーニャさんは出来合いのダンジョンを管理させられる。


 これは、魔王としてはあまり褒められたものではない。自分の意思で侵略しているわけじゃないからだ。


「けれど、ケンカを売ってしまった以上は仕方ないわね……」


「そうじゃ。誰を敵に回したんか、考えてもらわんと」


「人間相手に、こんな目に遭わされるなんて」


「カズヤさんはそれだけ、アーシらにとって大切な存在なんじゃ。それを邪険にされたら、アーシでも怒るけんね」


 珍しく、シルヴィアが腹を立てていた。シルヴィアは普段、人に怒った顔など見せない。


「あなたたちの考え方を、そこまで変えてしまうなんて」


「いや。あの道の駅が買い取ってもらえんと言われたとき、カズヤさんがちょっとさみしげな顔をしたんよ。それが、気になっとっただけじゃ」


 オレ、そんな顔したっけ?


「でも、物件がこのまま寂れていくってのは寂しいなって思ったな」


「その優しいところが、みんなを引っ張っとるんよ」


「そうか」


 こうして、物件の話はまとまるかに思えた。


「でも、私とあなたは、敵対しているのよ? いいの? 私にダンジョンを任せても」


「敵対しているってのは?」


「彼女の家は、長年勇者と対立している、超弩級の魔王一家よ? 対して私は、そんな魔王一家と常に睨み合いを続けてきた、最強の勇者部隊の一角なのよ」


 そんな二人が、同じ敷地内をシェアし合うのだ。


「まともじゃないわ。部下に示しがつかないんじゃなくて?」


「はんっ。そんなチンケな悩みで、アーシとの契約を反故にしようとしとるんか?」


「チンケって! 大事な話よ!」


「アーシにしてみれば、チンケじゃ。今は令和ぞ? なにをしょーもない派閥争いで揉めとるか。今は、そんなんで勇者が務まる時代じゃと思うとるんか?」


 ユーニャさんの瞳からは、迷いの色が見える。


 対して、シルヴィアは強気だ。


「あんた、それで生徒会長なんか? しょーもな」


「しょうもないですって!?」


「くだらんわ。勢力争いごときで、アーシの屋台骨が揺らぐとでも考えとるんかいな」


「くっ……」


「決まりじゃ。あんたに選択権なんてないんじゃ。後は、アーシがなんとかするけん」


 こうして、正式にユーニャさんがシルヴィアのダンジョンを管理することとなった。


「そうだ。いっそツィナーとドロリィスも、シェアし合えばいいじゃないか」


「ワタシが、ツィナーと?」


「そうだ。二人はどうせしのぎを削り合うんだろ?」


 だったら、もういっそ二人で住んでしまえばいい。


 上下にダンジョンを分けて、どっちでも。


「じゃあ、それで」


「いいのか、ドロリィス?」


「おう」



 


 だが、後日大変なことに。


 また、図面武闘会が開かれることとなったのだ。


 しかも、シルヴィアと、彼女の親が戦う。

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