第40話 お世話してもらうフィーラ

「自分が魔王にふさわしいだなんて、思っていなくて。魔王城の一件も、わたしは誰かと一緒に住めればいいかなと」


 フィーラは、あくまでも消極的だ。


「アン、フィーラをどうすればいい? どうしたら、自主性を育てられるだろうか?」


「そうですわね……カズヤさんの頼みですから、聞いて差し上げたいのですけれど。こればかりは、フィーラちゃんご本人がお気づきになるのがよろしいかと」


「あんた以外の魔王にも、聞いてみるのがいいかもしれん」


「ですわ。わたくし一人のアイデアでは、イメージが偏ってしまいますわ。いろんな人の考えを聞きつつ、ご自身の思考、イメージを膨らませていけば……」


 なるほど。寮生全員の話を聞いてみるのも、いいかもしれない。その上で、独自の考えを上乗せすると。


「けれど、結構見て回っているんですよね。ドロリィスさんがさっきいらして、話を聞き撒いたし」


「ならば、うってつけの方がいらっしゃいますわ。ニンニン」


 ちょうどアンが休憩に入るというので、同行することにした。

 オレたちが向かったのは、学食を埋め尽くす人だかりである。


 そこには、『生徒会のからあげ』という屋台があった。

 シルヴィアの店にまさるとも劣らぬ、大人気である。みんなめいめいに缶のソーダ水を片手に持って、立食でいただくスタイルだ。大阪にある、有名なホルモン焼きの店を思わせる。


「いりりりーらっしゃいいーりりりららっしゃいー。あげたてサクサクのお。文化祭恒例のぉ生徒会かるるるるあああげええええ!」


 声を張り上げて接客をしているのは、なんとユーニャさんだ。


「ふわああ!」


 オレたちの姿を見て、ユーニャさんが照れくさそうに顔を引っ込める。


「ななな、なんであんたがここにいるのよ!?」


「そんなに避けなくていいだろ? 唐揚げセットをくれるか?」


「アーシは、ヤンニョムチキンじゃ」


 いつの間にか、シルヴィアも同行していた。そういえば、デートしてくれって言っていたな。


「わたしも、同じものを」


「待った。ユーニャさん、オススメはあるか?」


 身を乗り出して、オレはユーニャさんに尋ねた。


「顔が近いわね! まあいいわ。オススメは、幸せスパイシーから揚げよ!」


 幸せなのに、スパイシーなんだな。


「できあがりよ。フィーラちゃん、召し上がれ!」


 フィーラに、ユーニャさんが「あーん」をする。


「店員が、そんな急接近していいのか?」


「いいのよ。そういうサービスなの」


 だから、屋台で立食スタイルなのか。

 ユーニャさんにあーんしてもらえるなら、そりゃあ人気モデルだろう。


 少し戸惑いつつも、フィーラはあーんに応じる。


「まあ。素敵ですわ」


 アンは、からあげをおかずにして、セットのおにぎりにパクついていた。


 オレも、もらおっと。

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