第47話 最終話 ダンジョン完成

 ドナが建てていた、崖ダンジョンが完成した。


「ようやく、こちらのダンジョンも完成したな」


 あとは、居住者を待つばかりである。


「それに関して、オレに提案があるんだが?」


「わかったカズヤ。お前に任せようじゃないか」


「実は、アンネローゼにそのまま使ってもらおうかな、って」


 アンは元々、このダンジョンの玄室を使用していた。だから、このダンジョンの光景なら熟知している。だったら、そのまま使ってもらえばいいのでは、と考えたのだ。


 事実、アンはもう素顔を晒して玄室のボスモンスターを操っている。


「いいじゃないか。気心のしれている相手なら、ドワーフ共も喜ぶだろう」


 ドナの言う通り、ドワーフたちもオレの意見に賛成してくれた。


「それだけじゃない。他のメンバーにも扱ってもらおうかなって」


「例えば?」


「まず、地上階なんだが、ここに道の駅を置く」


 ブヒートくんの屋台を置けるスペースを、配置するのだ。


「たしか魔王は分裂できるんだよな? ここにシルヴィアの幻体を配置する」


 こうして、『旅の準備も可能なボス部屋』みたいなポジションにする。


「ふむふむ」


「さらに、崖の内部にも玄室が余っている。そこにはドロリィスの幻体などを配置する」


 となると、ボス前のいい腕試し相手として、ドロリィスがいい仕事をするのだ。


「で、シノブが開発したトラップを各所に配置して、難易度を上げるんだ」


「フィーラは、どうするのだ?」


「最終の砦として、立ちはだかったもらう」


 現在フィーラは、オレの部下になっている。そのはじめの仕事が、幻体で冒険者の行く手を遮ることとした。


 また、最初の道で右に行けばドロリィスと最初に戦い、左に行くとフィーラが腕試しの相手になる。その場合、強さは調節されるような仕組みにするのだ。


「最初に戦ったのがフィーラなら、ラスト手前の相手はドロリィスになる」


「ふむふむ」


 あれから、アンネローゼの戦闘成績は二年生の中でもトップクラスに成長した。もはや、どんな冒険者に見せても恥ずかしくない。


「ありがとうございますわ。カズヤさん」


「いや。アンはがんばっていたからな」


 その努力に報いるなにかを、してやりたかったのだ。


「でも予算は結構ぶっ飛ぶぜ。いいのか?」


「もちろんですわ。両親からお金を前借りして、この崖を買わせていただきます」


 両親は買い取ると言っていたらしい。が、アンは出世払いと、あくまで自腹を切りたがった。


「すごいのは、カズヤさんです。コンビニで幼い頃の魔王ドナを助けてから、すごい成長率ですわ」


 アンが、妙なことをいい出す。


「ん? どういうことだ?」


「ご存知ないのですか? あなたがサスマタで魔物から助けた少女こそ、幼少期の魔王ドナなのですわよ?」


 マジか。


「おいドナ。今の話は、本当なのか?」


「真実だ。だから私は、お前を自分の部下として、ずっと保護していたのだ」


 ドナのいる時空は、時間の流れが地球とはまるで違うらしい。


 まだ魔王ですらなかった頃のドナは、修学旅行先の地球で道に迷ってしまった。そこで、ドナの家を妬む魔物どもに狙われたらしい。


 そこへオレが駆けつけ、無事に助けたのだという。


「冒険者善子ヨシコを通して、お前が善子のいとこだとわかって、面倒を見ることにしたのだよ」


 そんないきさつが、あったとは。


 どうして魔王なんて高位の存在が、オレなんかを部下にしたんだろうと思っていたが。


「本当に、世話になった。お前がいなければ、私はこの地に立ってすらいなかっただろう」


 ドナが、オレに頭を下げた。


「お礼だなんて、やめてくれ。あんたらしくもない。それに、無事だったならそれでいいじゃねえか。いつもどおり、振る舞ってくれよ」


「う、うむ」


 照れ隠しのつもりか、コホンとドナが咳払いをする。


「まあ、ええ。アンちゃんのダンジョン購入記念に、なんか作ろうかのう」


 シルヴィアが、エプロンを羽織った。


 フィーラが同じように、野菜やお肉を準備し始める。


「先輩、なにをします?」


「もち、焼きラーメンじゃ」


 ドロリィスが果物をミキサーにかけ、ドリンクを作った。


 シノブが、できあがったドリンクを冷やす。


 アンネローゼは、盛りつけをした。


 みんな揃っていただきます……という矢先である。


 ヴィル女校長のベイルさんが、どこからともなく出現した。


「あの、また問題児が増えてしまって。新しい寮を見繕っていただきたいのですが」


 オレたちに頼みごとをする。


 ドナがオレの腕をヒジでつつく。視線は、ラーメンに向いたまま。


 オレが、ベイルさんの応対をしていいってことだよな?


「承りましょう!」


(おしまい)

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フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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