第45話 要塞 スパウルブスへ

 シノブに連れられて、女子寮【霧谷館キリタニカン】に向かう。


 庭に、ドンと宇宙船が。円盤型ではなく、スペースシャトルのようなタワー型である。


「これは?」


「あたしが作ったダンジョン」


 この宇宙船は、要塞型のダンジョンだという。

 シノブは、ダンジョンを完成させていたのか。

 なんというか、ロボット物のアニメで見たスペースコロニーのようにも見えた。たしかに、あれもダンジョンと言えばダンジョンか。


「ダンジョンを自分で作るヤツは、多い。空を飛ぶダンジョンだって、珍しくはないんだ」


 ドロリィスが、この業績がいかに凄まじいかを説明する。


 浮遊するタイプのダンジョンは、割と卒業過程で作っている魔王がいたりするという。天空城などは、案外人気でメジャーらしい。


「それでも、開発するとなったら複数人だ。膨大な魔力を持つ素材を、自力で取りに行かなければならない。しかしシノブは、全部一人で作った。半年ほどでな」


 すごいな。こんな規模の宇宙船を、たった一人で完成させるなんて。


「シノブのダンジョンにおける執念は、とてつもないな」


 魔王ドナも、シノブが作ったダンジョンの完成度に圧倒されていた。


「恒星間移動だけではなく、居住も滞りなく行える。しかも、チェストまで用意してあるじゃないか。ここまできたら、もはや宇宙に浮かぶダンジョンだ」


 さすがに、インパクトが強烈だったようだ。


「しかし、シノブよ。どうしてこんなに急ぐ? キミの卒業はまだ先のはずだ。順当に行けば、このまま短期間で卒業となるが。ヴィル女を出たい理由でもあるのか?」


「とにかくみんな、乗ってもらいたい。お願い」


 オレたち全員に、シノブは宇宙船へ乗れという。


「何をする気なんじゃ、シノブちゃん? 理由いかんでは、アーシらはアンタを止めなイカンくなるんよ?」


 おそらくシルヴィアは、シノブがこの宇宙船で、スパウルブスに報復をする気なのでは、と考えているのだろう。


 アンやフィーラも、心配げに二人のやり取りを見つめていた。


「止める必要はない。ついてきてくれるだけでいい。手も出さないで」


「だからなしてなんよ?」


「ついてくればわかる。大丈夫。問題は起こさない。すぐに終わるから」


 どうしてもシノブは、オレたちを乗せる理由を話そうとしなかった。


「信じて、いいんだな?」


「カズヤ!」


 ドナに止められても聞かず、オレは宇宙船に乗り込んだ。


「なんかあったら、オレが責任を取る! それでいいだろ?」


 シノブがスパウルブスに危害を加えたら、オレはどんな処分でも受ける。


「仕方ないな。みんな、中に」


 ドナが先導して、ヴィル女全員を船に乗せた。



「シートベルトは?」


「いらない。ワープはすぐに済むから」


 シノブがコンソールをいじると、あっという間に宇宙へ出る。


 宇宙の広さを堪能するまでもなく、目の前に巨大な要塞が目に飛び込んできた。


 これが、スパウルブスか。

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