第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する
第36話 ヴィル女の文化祭
オレは、ヴィル女の文化祭にお呼ばれした。
男が来ていいのかよ、こんなところ。
「よくおいでくださいました、カズヤさん。ドナ閣下」
ヴィル女の校長であるベイルさんの許可をもらっているとはいえ、緊張するぜ。
「うむ」
ドナは、変わらず呑気に振る舞っている。
「この文化祭は、ビジネスライクな側面もございます。生徒がどれだけ、商業に関心を持っているか、わかっていただけるかと」
つまり、実際に商売っ気があると。
舞台演劇も演奏も本格的だし、単なる高校の文化祭とは趣が違う。
他校の男子生徒も、遊びに来ていた。魔王っていうくらいだからもっと偉そうなのばかりがいると思ったが、案外おとなしい。草食系魔王っていうのだろうか。魔王が草食って、どうよ。
演劇を終えたドロリィスとツィナーが、体育館から出てきた。
「キャーッ! こっち向いて、ドロリィスさまぁ!」
「素敵です、ツィナー様!」
男装したドロリィスとツィナーが、女生徒に囲まれている。
「くっ。私は男子ではないっ」
「はんっ、まったくさ。けど、モテる女は辛いねぇ」
まあ、男子よりかっこいい女子魔王がいたら、男子も引っ込まざるを得まい。
「こっちですよ、カズヤさん、ドナさん!」
二階の廊下から、フィーラがこちらに手を降っている。
「おーっ。待っててくれ」
フィーラに会いに行くため、オレたちは二階に向かった。
だが、教室に入った瞬間、目がチカチカし始める。
「平成レトロカフェって!」
ビーズでデコった看板で、もうやられていた。
フィーラも、ミニスカルーズソックスという出で立ちである。髪もいつものショートを、ビッグテールにしていた。
「ご注文をどうぞ」
「おすすめはなんだ?」
まったく動じていないのか、ドナは堂々と注文をする。
「クリームソーダですね。青いソーダ水にアイスが乗っています」
「ではそれを。あと、フルーツサンドを」
ドナにしては、ややぜいたくめのメニューだ。この日のために、朝食を抜いてきているからな。
「オレは、ナポリタンを」
「かしこまりました。ア、アゲていきますねー」
たどたどしいギャル語で、フィーラは厨房へと向かう。
だが、もっとも視線をかっさらっていたのは……。
「あの、プリクラを一緒に撮ってもらっていいですか?」
他校の女子生徒が、ゆめかわ系ギャルに声をかけていた。彼女も魔王だろうに、やけに乙女チックである。
「う、うん……」
プリクラを女子魔王から頼まれていたのは、ゆめかわ系コーデにイメチェンした、シノブだった。
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