第37話 ガングロ褐色ギャル化したシノブ

「なんだあれは?」


 オレは、ミニスカガングロギャルとなったシノブを指差す。


「シノブちゃんは、接客を免除しているんです。代わりに、プリクラのモデルをやってもらっています」


 フィーラの、いうとおりかも。


 シノブに接客は、不可能に近い。シルヴィアの屋台でも、応対は結局ロボ任せで、自分はずっと裏方に回っていた。皿洗いの鬼になっていたな。


「お手伝いする気はあるんですけど、やはり見ず知らずの方への応対は難しいみたいで」


 ならばと、「ギャルっぽい格好で立っておけ」となったのだという。プリクラ同伴してもらうと。


 ちなみにプリクラマシンは、シノブの自作らしい。プリクラまで作れるのかよ。


「しかし、驚くほど似合っているな」


 ギャルにするにせよ、シノブはどちらかというと「白ギャル」だろ。あんなガングロになると、東南アジア系の顔になるんだな。なんか、背徳感が増す。


「もうすぐ、シノブちゃんは休憩に入るんです。相席しますか?」


「え、男と一緒に座ってて、いいのかよ?」


「いいんです。ナンパよけになるので。それに、どうせ回るなら、地球人同士がいいかなって」


「そうか。じゃあ、遠慮しない」


「シノブちゃーん。休憩してきて」


 フィーラがシノブを呼ぶ。


 シノブが「うむ」と、オレの隣に座った。


「今日は来てくれてありがと」


「お、おう」


 注文していた品物が来る。


 オレはさっそく、ナポリタンをいただく。


「おお、しっかりした味だな。食ってみろ」


 なんとなしに、オレはフォークでナポリタンを巻き付け、シノブに差し出した。


「え!?」


 目を泳がせて、シノブがアワアワする。


「あきらめろ、シノブ。カズヤはそういう男なのだ」


「そうだった。こ、このたらし。たらしカズヤ」


 自分に言い聞かせるように、シノブがまたジト目に戻った。


「あーん。ぱく」


 シノブは、ナポリタンを口にする。すぐに目を輝かせて、喜んだ。


「うまいか。じゃオレも」


 オレは自分のフォークに、ナポリタンを巻きつける。


 だが、シノブが食べてしまった。


「あの、さすがに自重なさってください。カズヤさん」


 フィーラに、替えのフォークまで用意される。


「あっ! すまん。寮でのクセが」


 気が利かなかった。寮では、いつもシノブはオレの分をねだるのだ。病的なまでに痩せているくせに、食い意地だけは張っている。


「え、ちょっと。聞いた? ヒソヒソ」


「殿方と、いつも食べさせ合ってるってわけ? ヒソヒソ」


 おいおい。なんだか、雲行きが怪しくなってきたぜ。


「よろしければ、お二人で文化祭を見て回っては?」


「そうだな。ドナ、文化祭巡りを続けるか」


 オレが聞くと、ドナは首を振った。


「シノブと行ってこい。わたしは、文化祭を私的に探索する。未来の魔王たちの動向を、見ておきたいのだ」


「でも、オレもシノブも生身の地球人だぜ?」


「心配には及ばん。お前たちに手を出した者は、大魔王ドナ・ドゥークーの財産に手を出したと同様だ。そう、周りも理解している」


 たしかに、誰もドナには近づこうとしない。それだけ、ドナは尊敬と畏怖を集める存在なのだろう。


「じゃあ、行くか。シノブ」


「う、うん」


 オレは、シノブとヴィル女の文化祭を回ることになった。

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