第33話 大逆転

 スゴロクは、中盤戦に。


「カズヤさんすごいです。商家の娘が惚れましたわ! タラシ全開ですわ!」


 アンが、オレに無礼極まりない言葉を放つ。


「これは、マス目のせいでだなあ!」


「とはいえ、タラシなのはリアルでも変わりないが」


 ドナにまで。ひどい。


「今んところ、金が順調に増えてるんはカズヤさんなんよねえ。アーシも奮闘しとるんじゃが」


「じゃけん、一番進んどるんは、このワシじゃ!」


 ベテランの貫禄で、ドゥーおじはスゴロクという運ゲーをこなしている。


「あー。しもうた。一回休みじゃ!」


 シルヴィアはトラブルマスに入り、自身が乗る商船が難破してしまう。無人島コースに。


「こっちはマフィアにハチの巣にされたわ! かろうじて生きているけど、一回休みよ!」


 ユーニャさんも、一回休みのマスを踏む。


 次に、オレの番である。


「……妻がカズヤくんに寝取られたわい」


 言い方ぁ!


「おめえは娘だけではのうて、嫁も奪うんか? 節操がないのう」


「待ってくださいよ。人聞き悪いですねえ!」


 ゲーム世界とはいえ、ひどいなあ。


「ワシは……ヤンデレカードじゃと?」


 包丁を持った女性が、ドゥーおじに取り憑く。


 ヤンデレがいると、今までサポートしてくれた女性陣が追放されてしまう。いわゆる、デバフのカードだ。


「困ったゾイ。今まで妻でバフがかかっとったのに、カズヤくんに追いつかれそうじゃ」


「じゃけんど、あんたの敵はアーシじゃけん」


 今のところドゥーおじがトップで、オレは二番手についている。

 シルヴィアはようやく無人島を出て、三番手だ。しかし、無人島を買い取って、お金は最も稼いでいた。このままゴールすれば、トップになる。無人島ルートを無事に通過したことで、ゴールまでショートカットできていた。


 だが、ラストで両者行き詰まることに。


 すごろくあるある。出目ぴったりでなければゴールできないワナに、ドゥーおじは陥っていた。ダイスを二つ使うルールが、ここでアダに。


「おのれー。せっかくヤンデレのデバフを剥がしたと言うに!」


 ドゥーおじは、あと三が出れば勝ちだ。しかし、シルヴィアがすぐ後ろにつくまで、ゴールを言ったり来たりしている。


 ここで、おじが新ルールを追加してきた。


「ピンゾロが出たら、お前が抱えとるヤンデレがこっちに襲撃しに来て、ワシは振り出しに逆戻りじゃ」


「マジですか」


「その代わり、お主らの資金は親の総取りできるようになるぞ。一気にトップ通過じゃ!」


 理不尽なルール変更に、プレイヤーからブーイングが飛ぶ。


 運命のダイスが、投げられた。


 出た目は……ピンゾロだ。 


『来ちゃった』


「ぬうおおおおお!」


 実体化したヤンデレが、ドゥーおじのマスにソロリソロリと近づき、おじをボコボコにした。


 そのスキに、シルヴィアが単独ゴール。


「ワシの負けじゃー」


 ドゥーおじが、あっさり負けを認める。




 ちなみにオレは、最終局面で魔王に惚れられていた。


「最後までタラシじゃったのう」


「タラシね」


 シルヴィアもユーニャさんもひどくない?

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