第31話 遠のく夢
ヤンゴンに戻り、コウジはそれからの日々は、仕事やサッカーなどをして、気を紛らわせた。
そして、カタール支店設立に向けた計画をひたすら練っていく時間に費やした。
少しの寂しさはあったがそれ以上にカタールへという気持ちが強くなっていった。
LINEとfacebookのブロックはされていたが、Instagramだけはブロックされていなかった。
コウジは、Instagramからメッセージを送ることもできたが、送ることはしなかった。
ここで送ってしまった後に、ブロックをされれば、
コウジがエリーとの接点が全てなくなってしまうからだ。
時折、エリーが足の写真を投稿していた。
コウジは特に気に留めなかったが、実はこの時、エリーは足の症状が悪化しており、休職をして台湾に戻っていたのだった。
カタールの計画を模索していた 2015年 8月
イスラム国(ダーイッシュ)の台頭により、中東の治安が急速に悪化。
周辺国へも状況が波勢し、一旦カタールへの進出計画は白紙になった。
本社からも直々に「一旦、カタール計画は忘れてください」と通告を受けた。
そのメールを見た時、コウジは愕然とした。
「なんでこんなにドーハが遠いんだ・・・」
コウジが何度も壁を越えて、これからだ!と意気込んでもまたすぐに壁が現れるのだった。
さらに、チェン、エルビス、ファンらもカタールでの任期を終え、去って行った。
チェンはその後、カンボジアに赴任をすることになっていた。
コウジにとって、2015年は激動だった。
逆境の中だった。しかし、それを乗り越えようともがき続けた。
2015年 9月 数日ばかりカタールに行き、こっそりと市場調査をしていた。
「また、計画が動き出す時がくる。 それまでできることをやるんだ」
そんなコウジのやる気とは裏腹に、さらに追い討ちをかける出来事が起こる。
1年前に着任したスタッフが、ミャンマーの環境に馴染めず、途中帰任することになった。
当然、コウジの任期も延びてしまった。
1週間後、コウジの任期延長の話を聞きつけた、タケル、マサル、リョータからはありがたくもない 「任期延長おめでとう」 の 祝福を受けたのだった。
そんないらないお祝いの席でのことだった。
エルビスからメッセージが届いた。チェンが交通事故に遭ったと連絡だった。
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