第19話 寛大な支店長

コウジ:あの、支店長 お話が・・・

水木:おう、どうした?


コウジ:あの、12月15日なんですが、どうしても休みが欲しくて。

水木:・・・どれぐらい?


コウジ:12月15日の午後から、12月18日の朝までです。 12月18日の朝にはオフィスに通常通り出社します。


水木は、考えこんで大きく深呼吸をした。


水木:あのさぁ、深くは聞かないけど、どうしても行かなきゃいけないの? 普通なら休みの許可をだすけど、移転というバタバタしたタイミングなんだ。わかるか?


水木は、既にコウジがどこに向かおうとしているかをわかっていた。

ミャンマーの日本人コミュニティは狭い。

コウジとエリーの話は、一部の駐在員を通して支店長の耳にまで入っていたようだった。


コウジ:はい、でもどうしても行きたいのです。 お願いします。


少し水木は考え込んだ。 そして


水木:・・・わかった。 行っていいよ。


コウジは、深々と頭を下げ部屋を出た。


オフィスを出てから、トレーダーホテルのバーにいくと、ツカサと一緒にマサルとリョータがいた。


コウジ:ツカサ、支店長の許可をもらった。15日からドーハに行けることになったんだ。

ツカサ:おお、よかったじゃないか。 にしてもコウジの支店長、寛大だな。こんなわがままを聞いてくれて(笑)


リョータ:何々、どうしたの? え、ドーハ行くんでしょ?

コウジ:そうなんだ。でも12月15日がオフィスの移転初日だから厳しかったんだけ

ど、なんとか支店長説得して許可もらえたんだ!

マサル:うわぁ〜 コウジの上司やるのも楽じゃねーな!

リョータ:いや、コウジの上司って大変以外の何ものでもないよ(笑)俺が上司だったら絶対いかせてないよ、絶対に(笑)

マサル:とりあえず、アジア最終予選突破して、首の皮一枚繋がったなコウジ。

エリーに会う前に、終わるところだったな。


コウジも同感だった。


移転初日で配線や、荷物や机の設置など力仕事も多くあり、当然 若手のコウジには人一倍動かなければいけなかったからだ。


でも、なんとか休みをくれた水木に感謝をしつつ、コウジは恩返しのつもりで普段の仕事を今まで以上に率先して取り組んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る