第33話 パリ・サンジェルマン

2015年 12月上旬のある週末


コウジは、ツカサと一緒にホテルのレストランで朝食ブッフェをとった。


ツカサ:コウジ、年末は日本帰るのか?

コウジ:いや、年末はドーハに行くんだ。パリ・サンジェルマンとインテルの試合を観てくる。

ツカサ:激アツなカードだな。 今のパリ・サンジェルマンは誰がいたっけ?

コウジ:えっと、有名選手でいうと、前線は カバーニャ(ウルグアイ代表)、ズラタン・イブラヒモビッチ(スウェーデン代表)、ディマリア(アルゼンチン代表)の3トップで、

中盤はモッタ(スペイン代表)とルーカス(ブラジル代表)、

チアゴ・シウバとダビド・ルイスのセレソン(ブラジル代表)センターバックかな。


サッカー好きなコウジはスラスラと選手の名前を楽しげに挙げていった。


ツカサ:いい選手ばっかだなー、チケットいくらぐらいしたの?

コウジ:シートカテゴリは2つしかなくて、僕は高い方のカテゴリだったけど、それでも1席 5,000円しなかったかな。

ツカサ:めっちゃ良心的な金額だな(笑)


ツカサとコウジは、サッカーの話を中心にストレスのない朝食を楽しんでいた。


朝食を終え、レストランを出てロビーに向かうと何やら見慣れた制服姿の人がずらり。コウジはすれ違いざまに、もう一度目をやった。


「あれ、カタール航空はいつも泊まるホテルは違うんじゃなかったか?」


コウジは近くにいたホテルスタッフに聞いた。


「カタール航空は12月から当ホテルに宿泊しています。これから2~3年ぐらいでしょうか」とホテルスタッフは言った。


コウジは驚いた。ツカサにこのことを伝えると、驚いていた。

「コウジ、お前引き強いな。 お前が使い倒しているシャングリラホテルにカタール航空まで呼んじまったな(笑)」


コウジにとっては、知り合いがいなくとも どこか嬉しかった。

毎日のようにカタールを意識できることが何より嬉しかったからだ。



12月30日

コウジは、パリ・サンジェルマン vs インテルの フレンドリーマッチがドーハで開催される為、その観戦に向かった。


コウジにとって最悪な状態から始まった2015年

最後は、コウジの好きな欧州サッカーをみて、気持ちよく年を越そうと決めたのだった。


ガラガラのヤンゴン国際空港。

ドーハ行きの飛行機も、さらにがらんとしていた。

機内では、暇をもてあましていたのか、陽気なマレーシア人の男性乗務員(アズマン)が話しかけてきた。


アズマン:こんにちは、どちらに行かれるんですか?

コウジ:ドーハだよ。年末年始ドーハで過ごすんだ。

アズマン:あら〜、ドーハでわざわざ過ごすんですか? 何されるんですか?

コウジ:パリ・サンジェルマンとインテルの試合が今晩あるんだ。僕はそれを観にいくんだ。


アズマン:えっ? そんなすごいチームが来てるのですね! 知らなかったです。


コウジが聞くと、アズマンもサッカーが好きだった。

好きなチームはバイエルンミュンヘンだという。

コウジはアズマンとサッカートークで機内を過ごした。途中、ブラジル人の乗務員も話に入り込んできた。


コウジが飛行機を降りる時、アズマンの連絡先を教えてもらった。

コウジのスマホにアズマン自らが連絡先を入力してくれた。エリーに連絡先を渡すときと比べて実に気が楽だった。


アズマンはその後も乗務業務がある為、この年末年始のタイミングでは会うことができなかったが、次回会おうと約束をしてコウジは飛行機を降りた。



その夜、パリサンジェルマンvsインテルの試合を一人で観戦しては、

一人静かに2015年を締め括ったのであった。

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