第32話 傷だらけの再会

タケル、マサル、リョータ:コ・ウ・ジ くん!!任期延長おめでとうございまーす!!!!!


マサル:いやーコウジはもってるねー! ドーハの悲劇から始まり、エリーに奈落の底に突き落とされ、しまいには任期延長って(笑)


ツカサは失笑し、コウジは無視をした。


タケル:1年前はコウジとエリーの話で盛り上がってたのに、コウジ 他にネタないのかよ?

マサル:お前がノロノロしてる間に、俺ら日本に帰っちゃうぞ!

リョータ:そういえば、俺らの任期 2016年4月で終わりだもんねー、うぇーい!!

釈放だー!と喜ぶ3人に対しコウジは悔しそうに言い返す。


コウジ:任期延長でも、ドーハの計画が進めば自然に僕の任期も変わるさ。


リョータ:コウジはすごいよな。そこまでしてドーハに行きたいのかよ。 エリーはまだいるんだっけ?


コウジ:エリーは今 台湾に戻っているけど、だいぶ長いことドーハに戻ってきてないな。

マサル:コウジ、そういうの退職って言うんだよ。


コウジが言い返そうとしたタイミングでスマホにメッセージの通知が入った。


コウジ:エルビスから?・・・珍しいな・・・


コウジがメッセージを確認した。


「コウジ 元気か?

 チェンがバンコクで交通事故に遭った。

 スクンビットにある サミティヴェート・スクムウィット病院に入院している

 コウジはチェンと仲良かったし、今もミャンマーにいるようだから伝えておくよ。」


コウジはメッセージを見て驚いた。


翌日、コウジはすぐに週末の飛行機を予約した。

ヤンゴンからバンコクへは1時間程度のフライトで、往復航空券も安ければ100ドル程度でいける。


コウジは、チェンの運ばれた病院に向かった。

清潔感のある豪華なロビーの病院だ。日本語表記もあり外国人やタイの富裕層向けの病院であることがすぐにわかった。


部屋に入ると、チェンと台湾人の男性が一人いた。 ベッドにはチェンが酸素マスクをつけて眠っていた。

コウジは言葉が出なかった。


するとチェンはすぐに目を開け、コウジを見た。 チェンはゆっくりと左手で親指を立てた。

さらに酸素マスクを外して起き上がった。


顔中傷だらけだった。


チェン:コウジ、わざわざ来てくれてありがとう。

コウジ:びっくりしたけど、大丈夫か?

チェン:ああ、ちょっと大袈裟な処置だけど話せるし大丈夫だよ。彼 僕と一緒にカンボジアの職場で働いている人だ。


チェンが紹介したその台湾人は軽く挨拶を交わし、部屋を出て行った。チェンとコウジの二人だけにしてくれたのだった。


コウジ:一体なんでバンコクにいるんだい?

チェン:仕事で休みとって遊びにきていたんだよ。それでタクシーに乗っていたら横から車が突っ込んできてこの有様さ。

チェンは服を脱いで手術の傷など痛々しい傷をみせた。


コウジ:それにしても、一命を取り留めてよかったな。

チェン:そうだな。ドライバーの後ろに座っていたからそれで幾分救われたよ。 コウジもタクシー乗る時はドライバーの後ろに座ったほうがいいぞ。


チェンとの会話を続けていったが、気づけばチェンとは4月以来会話ができていなかったのだ。

コウジは、チェンに4月のことについて謝った。


コウジ:4月にチェンに無理難題つきつけて悪かった。

チェン:あぁ別にいいよ。 急に集まるとかなっちゃってコウジも可哀想だったな。カタール計画はその後どうなった?

コウジ:今の情勢から、少し厳しくなっている。 でもまだ頑張っているよ。

チェン:そうか。 コウジがカタールに赴任したら、俺もまたカタール行きたいなぁ

コウジ:僕がいなくても、台湾人でまだカタール航空で働いている人いるでしょ。

チェン:まあ一応いるな(笑)

コウジ:エリーは、台湾に帰っているようだけど、辞めたのか?

チェン:いや、まだ辞めてない。 足が悪くてその治療で帰っているんだが、エリーはもうすぐ辞めるぞ。


コウジは少し驚いたが、すぐに話を続けた。


コウジ:・・・そうか。まあ、エリーがいなくなってもカタールを目指すのは変わらないさ。

チェン:そうだな。頑張れよ コウジ!


チェンと握手を交わし、部屋を出た。

少し離れた場所でベンチに座っていたチェンの同僚にお礼をいい、コウジは病院を出た。

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