第6話 嗚呼、僻地の日々よ
コウジにとって、ミャンマーでの日々は驚きの連続だった。
初めて経験する東南アジアのスコール、それによる路面の冠水。日本の道路や排水事情であれば、多少軽減されるだろうが、インフラの脆弱なミャンマーでは、少しの雨でも冠水してしまう。誤って水たまりに足を突っ込んでみようものなら、破傷風や、感染症にもなってしまう。
さらに、毎週のように発生する停電により、エアコンが止まり、汗だくになりながら寝ることもあった。
「日本の常識が通用しない」
これは世界のどこにいても思うことだろうが、ミャンマーも例外ではなかった。
予定通りに郵便の配達がされない、待ち合わせ時間に決まって遅れてくる。
インターネットが激遅で、写真をダウンロードするのに数分かかる。
日本のスピード感でいると、ストレスばかりが溜まるのだった。
しかし、ミャンマーは海外では珍しいほどに治安はよかった(2013年当時)
凶悪事件に巻き込まれることもなく、窃盗事件に出くわすこともなかった。
唯一の良さといってもいいくらい治安だけは良かったのだ。
そんな平和な街での生活だったことで、深夜にホテルのバーから家に徒歩で帰ることもあった。
深夜一人で歩いていても人に襲われる危険はない。
むしろ深夜帯に危険なのは人よりも、徘徊している野良犬の方だ。
夜になると活発になる。
コウジは狂犬病の注射を日本で済ませてはいたが、野良犬に出くわしたくないものだ。
深夜、早朝を歩く時は、犬の位置と 近くに人がいないかを確認しながら歩く。
そして双方の距離を常に意識して歩いていた。
ヤンゴンの街中には浮浪者のような人もいる。
普段なら絶対関わらないが、犬に追いかけられたり吠えられたりするものならば、そういう人たちや、道端に座り込んでいる人に助けを求めたいと思ったほどだ。
こんなこと、日本で生活しているのであれば尚更 お目にかかれないだろう。
コウジはミャンマーでの生活が1年も経つころ、潔癖症だった性格は徐々に克服され途上国での生活に徐々に適応していった。
住めば都といったところか。
友人も多くできた。
日本人以外に、ミャンマー人、ミャンマーで生活する外国人などコウジの交友は多岐にわたった。
日本では味わうことがない、多くの人との出会いや経験が刺激となり、ミャンマーでの生活を支えていった。
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