第47話 夢への道
2016年も9月の中旬に差し掛かり、あと1ヶ月ほどで雨季が終わりを迎えようとしていた。
コウジに中山から連絡が入った。
コウジは、パソコンをもってオフィスの会議室に入って行くその姿を水木は目だけ追って、すぐに視線をパソコンに戻した。
水木にとって、ヤンゴンの支店の業務に注力をしてもらいたいと思う一方、コウジのカタールへの目標が今の仕事の大きなモチベーションになっていることは理解していたからだ。
中山:コウジさん、一つ話がありまして。紹介いただいたマタルさんですが、その後も会話を続けていましたが、我々が求める出資比率に折り合いがつかなくてですねぇ・・・
いつも明るい中山が少し曇った表情でコウジに伝えた。するとすぐに中山の顔はまた明るくなった。
中山:ですので、ドバイ支店経由でパートナー候補を我々で探してみます! ドバイとドーハは隣国ですので何かしらパイプはあるでしょう。
コウジ:ありがとうございます! 私の方で何か手伝えることはないでしょうか?
中山:いえ、大丈夫ですよ。 こうしたパートナー選定こそ我々の仕事でもあります。コウジさんはドーハに行ってから思いっきり働いてもらいますよ(笑)
コウジは、毎日中山のカレンダーをみては、中東会議などが入っていないか気にしていた。
コウジの紹介したマタルとの交渉は決裂したのだが、会社として本気でパートナー選定を行ってくれていることに、コウジは心の中で何度も感謝をしていた。
「もう少しだ、もう少し」
コウジは、はやる気持ちを抑えながら、いつもと同じように淡々と業務をこなしていった。
「カタールは、順調かね?」
仕事中、水木がコウジに小さく声をかけた。周囲のスタッフに聞かれない程度の大きさで。
コウジは、小さく頷いた。
すると水木は一息ついてから、空いている会議室へコウジを呼んでから水木は言った。
「コウジさん、私 そろそろ帰任なんだよ」
水木の口から発せられたのは、帰任の話であった。
約4年もの間、コウジの上司として過ごしてきていた。
コウジの頭の中には、2年前の勝手言って休みをとってドーハに向かった12月の思い出が蘇ってきた。
コウジ:そうでしたか。 やっと帰国ですね。 いつなんですか?
水木:そうねぇ、あと2ヶ月以内というところかな。
コウジ:後任の方はどなたでしょう?
水木:早川さんという方だけど、コウジさん知ってるかね?
コウジ:いえ、私は知らない方ですね。2ヶ月ですか・・・あっという間ですね。
水木:そうなんだ。 それと、君の後任も早く探さないとね。
コウジ:・・・えぇ、まあ。
水木:君はカタールに次は行きたいのもあるし、ほら、君の任期は年内で終わるでしょ?
コウジ:はい、2016年12月末で・・・
水木:・・・むしろもう少しいたいのかい?
コウジ:いや、気になっているのは 次がカタールとなれば日本からカタールへ出張へいくより、ここからカタールへ向かう方が近いので、次のカタール赴任が決まっているのなら、あと3−4ヶ月ぐらいはここでいいのかなと思っています。
水木:あら、コウジさんや ようやくこの国が好きになったのかい?(笑)
たしかに、後任が赴任してすぐに帰任というより、数ヶ月並走してあげたほうがいいかもね。
コウジは最長でも12月末までの駐在任期ではあったが、
水木の帰任と、カタールへの道に可能性があるということで、コウジは任期を2017年4月まで延長することになった。
25度線 @bayside15
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。25度線の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます