第一章(2012年)
第1話 アメリカじゃねーのか
2012年8月 東京都新宿区新宿 すべては ここからはじまった
- 昼過ぎのオフィスにて -
大林(部長):コウジ!
手招きをして呼ぶ上司の姿があった。
コウジは、デスクを立って上司のもとへ向かった。そしてそのまま4人ほどが座れる小さな会議室に入った。
大林:おぅ、急に悪いな。早速で悪いんだが、お前に海外赴任の話があるんだ。
コウジ:え、本当ですか?
コウジは、必死でどの国の話なのか瞬時に妄想が始まった。
→ コウジの頭の中 "自由の国・アメリカ? ずっと希望だしてたしついにきたか? イタリアやイギリス、それからドイツでもいいぞ!"
しかしコウジの 妄想とは、裏腹に、上司の言葉で一気に夢から覚めたのだった。
大林:お前の赴任先は・・・・・・・・・・・・ミャンマーだ!!!(笑顔)
コウジ:・・・・・・・(部長、どうして間をとったんだ・・・)
ミャンマーとは、東南アジアに位置し、西はインド、バングラディッシュ、北は中国、東はタイ、ラオスと5ヶ国と国境を接し、海にも面している。
貿易の要所の地域でもあるのだが、長い軍事政権と教育機関の廃止によって国として成長が止まっている国だった。
大気汚染もひどく、東南アジア最貧国とも揶揄される国でもあった。
コウジは潔癖症だった、旅行好きなコウジであったが、東南アジアに行ったことはなかった。
ミャンマーは東南アジアで、さらに衛生面も劣悪な環境である。そこだけはコウジもわかっていたのだ。
大林:どうしたコウジ? お前海外赴任したいって言ってたじゃないか?
コウジ:いや、そりゃ言ってましたけど 僕は入社してからずーーーーっとアメリカって言ってましたよね!!? なんでミャンマーなんですか?
納得のいかないコウジは部長に問い返す。でも部長の答えは実に明確だった。
大林:アメリカはさぁ、お前じゃいけないんだよ。旅行会社ってもんはビザが簡単におりんのさ。行けても部長以上だ。
コウジ:うーーーーん。。。。。ミャンマーですか・・・・・
赴任の話はフランクに始まったが、実に大きな決断を迫られることとなった。
大林:それじゃさ、来週まで時間あげるから考えておいて。もしどうしても嫌っていうなら他の人さがすからさ。
部長は立って会議室を出ようとしたが、コウジは最後に質問をした。
コウジ:部長、ミャンマーって支店ありましたっけ?
部長は目だけ天井を数秒みてから、コウジに向かって言った。
大林:いや、支店立ち上げだよ。だからめちゃくちゃ大変だと思う(笑)
そう言って部長は部屋から出て行った。
会議室は、あと10分ほど使用できた為、コウジはそこに残り考え込んだ。
「アメリカじゃなくて、ミャンマーか・・・・・もう全く逆の世界じゃないか」
自由の国・アメリカへ憧れていた青年は、
軍事国家・ミャンマーへの赴任のオファーを現実に受け入れられていなかった。
しかし、最後に上司が めちゃくちゃ大変だ と 言ったのも一つの優しさでもあった。
やる気をあげさせる言葉だけを並べることも出来た。
それでも、コウジに対して考えるように時間を与えたことは、
コウジが覚悟をもって海外赴任するか、どうか、判断をさせる為だった。
コウジは、その夜友人に電話をかけることにした。
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