第2話 そして扉はひらかれた
ミャンマー赴任の打診を受けたその日の夜、コウジは大学の後輩だったナオヤに電話をした。
ナオヤとはここ1年ばかり電話や直接会ったりする仲だった。
そんなナオヤも別会社だが、東南アジアへの赴任が決まっていたのだった。
ナオヤ:こんばんは、どうしたんですか?
コウジ:海外赴任の話うけたんだよ。ミャンマーだって。 どう思うよ。
ナオヤは少し笑った後、低いトーンで淡々と答えた。
ナオヤ:いや、いいと思いますよ。いけば人として日本で仕事してるより一皮も二皮も剥けると思います。 僕も2ヶ月後にシンガポールに赴任しますし、一緒に東南アジアで頑張りましょうよ。
ナオヤは、コウジに海外へでるように勧めてくれた。
翌日、コウジは羽田空港にいた。父が海外出張の為、見送りにきていたのだ。
父には昨晩の間に、海外赴任の打診があったことを伝えていた。
「いいじゃん、行って来なよ」と父は赴任を止めることはなかった。
父の会社の同僚や部下が続々とやってきた。
父はコウジを同僚や部下に紹介するタイミングで尋ねた。
「コイツ、ミャンマーに赴任するか会社から言われているようなんだ」
すると、父の部下や同僚らは躊躇なく言った。
「まぁ、海外赴任はチャンスあるなら行ったほうがいいと思いますよ」
周囲の反応は赴任に前向きで、あとはコウジの覚悟だけだった。
父を見送った後もコウジは考え込んでいた。
気を紛らわそうと、羽田空港の展望デッキに出た。
多くの飛行機が駐機しているのが見える。
そして離陸と着陸をする飛行機を見ていた。
「アメリカには、今はいけない・・・・・か」
アメリカへの赴任が出来ない今、コウジに残されているのは 日本でそのまま働くか、ミャンマーへの道 いずれかだった。
- 週明けのオフィス -
朝の早いタイミングで、コウジは部長のもとへ向かった。
コウジ:部長、今よろしいでしょうか?
大林:はいよ
大林は、コウジと一緒に人目を気にしながらスッと小さな会議室に入った。
大林:どうだ。どっちにするか決めたか?
コウジ:はい、ミャンマーに行きます
コウジの返事に、部長は少し深呼吸してから言った
大林:そうか。ようやくお前も海外か。まっ、今回はアメリカにいけないけどさミャンマーで実績つくってからアメリカ目指せよ。
コウジ:・・・はい
コウジにとって、ミャンマー赴任は夢が叶った瞬間ではなかった。
だから返事に明るさはなく、「這い上がって見せるさ」と言わんばかりの決意の返事だった。
コウジにとってこの数日にして予想だにしない展開となった。
何もない状態から、いきなり海外赴任の話になり、2ヶ月後には日本を離れるのだから。
だが、この選択はこれから始まる壮大な物語の序章にすぎなかった。
そしてコウジはこれから起こる人生の分岐点となる出会いがどこで起こるのかも知る由もなかった。
2012年10月
コウジは一人成田空港から、バンコク経由でミャンマーに向かった。
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