第42話 新たなるステージ
5月16日 朝
いつも通り、コウジは早朝のトレーニングをするため、ホテルに向かった。
この日の早朝は、カタール航空のクルーらがロビーにいた。
数時間後にヤンゴン発ドーハ行きのフライトがある為、ホテルを出る準備をしていた。
彼らのホテルを出て行くほぼ同じタイミングでコウジはホテルに入っていく。
普段通りの体調であって、ジムのメニューも同じだった。特に変わり映えのない日々になるはずだった。
トレーニングを終え、朝食の為、レストランに向かった。
食事中、コウジはエリーのInstagramの投稿が珍しく飛び込んできた。
コウジはしばらくの間その投稿を眺めていた。
その投稿とは、エリーがカタール航空を辞める投稿だった。
いつドーハを去るのかまで詳細には書かれていなかったが、コウジにとって一つの区切りでもあるようだった。
コウジは、もうかれこれ1年 エリーと話もしていないし、見たところで涙もでることはなかった。
だけども少し、寂しい気持ちがした。
彼女の存在が、コウジのドーハへの想いに影響があったことは間違いない。
だけども、エリーがいなくなったから、コウジのドーハへの気持ちが止まることはなかった。
コウジは仕事で辛い時があった時に しばしば2014年 12月を思い返しては、踏みとどまってきた。
「この悔しさは、忘れない」
それがあったからこそ、コウジは今ここにいる。
当時の経験が、理由ではなく、「バネ」になっていた。
かといって、コウジはエリーを憎んでいない。「出会えてよかった」 という気持ちが素直な気持ちだろう。
当時を思いだしながら、カフェにいた。時計を見ると、7時過ぎ。
「・・・カタール航空が到着するバスがもうそろそろくるかな?」
今朝 ヤンゴンにドーハからのフライトが到着し、ドーハから乗務で乗っていたメンバーは2泊または3泊ほどヤンゴンに滞在する。
コウジはカタール航空のクルーの到着をみてみたいという気持ちになった。
別に、友達が乗っているはずもない。 来るとしたら事前に連絡がくるはずだ。
なぜか、いつもは到着を見にいくはずもないのに、見てみたいという気持ちから、バスの到着を待った。
15分ほどして、バスが到着
初めて、ミャンマーに来るクルーだろうか。
大きな声を出しながらホテルに入ってくるクルーの姿があった。
それに続くようにどんどんとクルーが大きな荷物を抱えて入ってくる。
コウジは遠くから クルーらの到着してくる様子を見ていた。
「・・・・・・ あれ?」
一人の女性が僕を見て ニコっと笑ってくれた。
コウジは、思わず笑ってしまった。
「マリサ!!」
なんと、マリサがまたヤンゴンにフライトでやってきた。そしてまたしても3泊も滞在するのだ。
コウジ:マリサ、またヤンゴンにきたんだな!
マリサ:コウジ、覚えていますか?
コウジ:当たり前でしょ! 僕らfacebookでも友達じゃないか!
コウジが思っていたよりも早くに再会となったが、コウジにとって嬉しい朝となった。
マリサが滞在するこの3日間、コウジと一緒に食事に行く約束をした。
とても懐かしく思えていた、1ヶ月前のあの3日間。
コウジはそこで確信した。
「エリーとの思い出は過去 僕はもう、次のステージに入っているんだ」
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