第22話 冷静と情熱のあいだ
12月15日ヤンゴンを16:30のミャンマー航空331便で出発し、バンコクで19:55発のドーハ行き カタール航空829便に乗り換えた。
コウジは、このドーハ行きの便に乗る前に、自分自身にこう言い聞かせたのだった。
「たとえダメだったとしても、僕はドーハに来たことを後悔しない もし、ドーハに行かなかったら、それこそ一生、後悔するはずだ」
コウジを乗せたカタール航空 829便は、定刻通りドーハに向けて出発した。
12月15日 23時 カタール・ドーハ
定刻よりも少し早くドーハに到着した。ドーハ空港は移転拡張され、ハマド国際空港という名称とともに巨大な空港へと変わっていた。今までのようなバスでターミナルへの移動ではなく、ボーディングブリッジがかかり、そのまま徒歩で空港ターミナル内に入っていった。
真新しい空港内は、とても静かだった。人の歩く音、荷物を転がす音だけが、静かなターミナル内で響くぐらいだった。
多くの乗客がトランジットの為、セキュリティチェックへ向かった。コウジと他数名は、入国審査場に向かって足早に歩いていった。
コウジは、スムーズに入国審査を終え、荷物を受け取ってからタクシーに乗り込んだ。ホテル名を告げると、タクシードライバーは「OK」と言い、迷うことなくホテルに車を走らせた。
新たな空港から出てドーハ市内へ向かう道は、コウジにとって初めて見るドーハの景色であった。そして遠くに小さくではあるが高層ビル群(ウエストベイ)が煌びやかなあかりを放っていた。
ホテルに到着し、チェックインを終えて部屋に入る頃には、0時をまわっていた。
荷物を置き、ふぅっと息をついた途端、コウジのスマホが鳴った。エリーからだった。
「もう着いた?」
短いメッセージだった。エリーは起きていた。コウジは、すぐに返信をし、明日の昼過ぎに会おう と 伝えた。
コウジは、ホテルから見えるドーハの景色を少しだけみてから眠りについた。
翌朝、コウジはタクシーに乗り、アルアリスタジアムに向かった。コウジは、またドーハの悲劇のあったピッチを見に行ったのだ。
ドーハの悲劇は、単なるサッカーの一試合だけではなく、この試合を通じて、日本サッカー、さらには様々なスポーツにおいて、大きな変化が必要とされた試合だった。
"最後まで気を抜かない(諦めない)" という 根性論的ではあるが、それを体現された試合でもあった。
コウジはピッチを見ながら呟いた「何が起こるかわからない。 何が起こっても、受け入れよう。」
冷静と情熱を持ち続けてきた2014年コウジにとって、クライマックスがもうすぐそこに迫っていた。
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