第29話 先走る気持ち
ドーハから帰国して数日が経過した。エリーから珍しく、連絡がきた。
「ドーハに来ていたのね。チェンから聞いたよ。 次来るときは、会おうね」
エリーからの連絡に、コウジは驚いた。コウジは、「もちろん」と返信した。
数日後、久しぶりにツカサとリョータとバーで会った。
リョータ:コウジ、久しぶりだな。 復活したか?
コウジ:そりゃ、だいぶ前にな(笑)
ツカサ:中々忙しそうだな。 ドーハ無事にいけるといいな。
コウジ:そうだな。
リョータ:その後、エリーとは連絡とっているのか?
コウジ:いや、ほとんどとってなかったけど、5日前ぐらいにいきなり連絡来た。
ツカサとリョータは えっ!? っと言わんばかりに顔をあげた。
リョータ:で、なんだって?
コウジ:次にドーハ来る時には会おうって。
リョータ:ってーーーー!!! なんちゅう女だ! がっつりコウジのことフっておきながら。 また会いましょうってか? どんだけ、自分勝手な女なんだー!!!
リョータは天を仰ぐように叫んだ。
ツカサ:状況がかわからないけど、なんで急に連絡してきたんだ?
コウジ:僕が2月にドーハに行った時、エリーが紹介してくれた台湾人の男友達(チェン)と会ったんだ。
チェンがきっとエリーに気を遣って言ってくれたんだと思う。
リョータ:ん?・・・ちょっと待て、お前2月にもドーハにいったのか?
飛び起きるようにリョータが言った。
コウジ:そう、少し仕事ってことで。
リョータ:エリーに連絡してなかったのか?
コウジ:そりゃ、まだ気まづいと思ったから連絡してなかったんだ。
リョータ:コウジ、お前ってやつは絶好のチャンス逃しやがって! なんでドーハにいってエリーに連絡してないんだよ!
コウジ:こっちも少し時間タイトだったし、ほら アポイントもあったから。
リョータ:お前は、エリーとのアポイントが最優先だろ!!! 何してんだよ〜
遮るようにツカサが入った。
ツカサ:まぁまぁリョータ、コウジもいろいろ悩んで連絡してなかったんだ。 でも、コウジよかったじゃないか。 エリーが次は会おうと言ってくれて。
コウジ:そうね、なんだか少し気持ちが軽くなったよ。
コウジは、4月のミャンマーの正月休みを使ってまたドーハを訪れた。
エリーに会うだけでなく、市場調査も兼ねて。
この日、エリーは空港に迎えに来てくれていた。
コウジは会いたい気持ちを抑えながらも足早に入国審査場に向かった。
入国審査場は長蛇の列だった。
コウジは少し時間がかかるとエリーに伝えた。
20分後、ようやくコウジの番になった。
コウジが西アジア系の入国審査官にパスポートを出すと、入国審査官は隣のスタッフとベラベラ喋っている。
作業も遅く、先ほどまで普通に対応していた男だったが、コウジの番になった途端、対応のペースが明らかに遅くなった。
コウジはそのイライラから審査官に言った。
「おい、遅いぞ 何ゆっくりやってんだ。 急いでいるんだから早くしてくれ!」
審査官は、
「あぁ? お前何言ってんだ? うるせーな 黙ってろ!」と英語ではない罵声と睨みつけるように言い返してきた。
コウジはこれほど瞬間的に苛立ってしまったのに後悔した。
それは入国審査官の威圧が怖かったからではない、自分自身の感情を押さえつけれなかった自分自身に後悔したのだった。
コウジは、足早に手荷物検査を終えて出口に向かって歩き出すと、頭を抱えながら自身に言い聞かせた。
「あぁ、なんでエリーが絡むとこうも冷静さを失ってしまうんだろう・・・落ち着け。もうすぐそこで会えるんだ」
コウジは4ヶ月ぶりの再会を楽しみに、出口に向かった。
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