第24話 デタラメと呼ばれた夢

12月17日 ドーハ


結果はNoだった


翌日、コウジは、エリーと一緒に海沿いのテラスで食事をして、最後まで説得をしたが、コウジの想いは届いたのだろうが、実ることはなかった。


エリー:コウジの気持ちは十分わかったけど、私にとってコウジは良い友達でいてほしい。


コウジ:僕がドーハに来れたのなら、エリーは考え直してくれるか?


エリーは少し考えながら言った。

エリー:・・・それはどうかしら。コウジは、ドーハにくると決まったわけではないでしょ?

コウジ:そう。だけど今カタールに向けて計画を立てているんだ。会社として。

それが実現すれば、遠距離にならないだろ?


コウジの必死なアピールに対し、エリーは強烈な一言を言い放った。

エリー:コウジ、デタラメ言わないで!


前日までのエリーからは見たことがないような、表情と声のトーンだった。

その一言は、コウジのメンタルと、冷静な状態を完膚なきまでに壊すのに十分すぎるぐらいだった。


少しの沈黙が続いたあと、エリーは震えるような声で言った。


エリー:・・・ごめん、いいすぎた。

ドーハに支店を建てるとか変な期待をさせるような、デタラメを簡単に言わないで欲しかった。 でも、いつかね。約束だよ。


エリーのフォローがあったが、コウジには気力は残っていなかった。


コウジはサングラスをかけて話をしていたが、目頭が熱くなってしまい、サングラスを外せばすぐに泣いているのがわかる目だった。

涙がこぼれ落ちなかったのが幸いだった。


また沈黙が続いた。


お互い何も手に取らず、ただただ 対岸に見える 高層ビル群(ウエストベイ)を見ていた。


コウジは頭の中が真っ白だった。

エリーもまた、これ以上言葉を発することができないでいた。


どれぐらい時間が経っただろうか。


コウジとエリーは少しずつ落ち着きを取り戻し、時計に目をやった。


コウジ:そろそろ行こうか

エリー:うん、そうだね。


コウジはタクシーに乗りエリーの住む寮に送り届けた。


コウジ:エリー、この二日間、どうもありがとう。

エリー:私の方こそ、どうもありがとう。楽しかった。


扉を閉めて、タクシーは空港に向かった。




- ハマド国際空港 -

コウジは空港につくと、足早に歩いた。

途中で足を止めたり、考え込んだりすると、涙がでてきそうだった。


ヤンゴン行きの搭乗ゲート前につくと、パソコンを開いた。

コウジは、エリーと別れた後タクシードライバーに頼んで、撮ってもらった写真をfacebookにアップした。

がっくりした姿で、ドーハの景色をみるコウジの写真だった。

数時間後には、ヤンゴンの駐在員らの間では、コウジがフラれたという話が流れるのだろうが、コウジにとってはどうでもよかった。


コウジは機内に入ると、窓側に座り窓の外をずっと見ていた。


隣に、綺麗なミャンマー人が座った。

コウジに愛想よく、「ここ座りますね、お隣失礼します」と言わんばかりのジェスチャーで座った。

着ている洋服や、振る舞いの良さから、ミャンマー人のお金持ちか、モデルや芸能人であったのだろう。


しかし、コウジにはそんなこともどうでもよかった。

コウジは何も考えたくなかったのだ。


「あぁ、隣ですか・・・・・どうぞ・・・」

力の抜けた挨拶をして、また窓の外に目をやった。



コウジは、すべてをかけて向かったドーハだった。

コウジは支店長に無理言って、移転初日のクソ忙しい午後から、ドーハに向かった。

旅にかかるお金や、抱えていた大事な仕事なんて後回しにして、帰ったらどれだけ忙しくなるかなど先のことなんて、何も考えずに。

「今の人生で、何が一番大事(大切)なのか」

その譲れない何かが、ドーハにあった。


しかし、コウジにとってこの経験は彼自身を強くしていったのだった。


「必ず、ここに辿り着いてみせるさ」


離陸をし、機内から見えるドーハの夜景をみて誓った。


転々と街の燈が見え、コウジはその燈が見えなくなるまで、その光を目で追い続けていた。

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