第44話 すべて伝わっていた話

コウジは、エリーの同期・ティナとヤンゴンで知り合った。


シュエダゴンパゴダから車でレストラン会場に向かう間、助手席に座ったコウジは後ろに座ったティナにいくつか質問をした。

目線を合わせるのも恥ずかしいぐらいだった。


コウジ:ティナはもしかして、エルヴィス、チェン、ファンも知っているのか?

ティナ:そうよ、あなたも会ったと彼らから聞いたわよ。

コウジ:そういえば、チェンが交通事故にあったので僕は先日バンコクの病院にいってきたんだよ。

ティナ:そうみたいね。それもチェンから聞いたわよ(笑)


コウジはチェンにメッセージを入れた。

コウジ:今、ティナという人と会ったんだけどチェンは知り合いか?

チェン:そうそう。知り合いだし、今でも仲良いよ。コウジ、ティナと会ったんだってな(笑) ティナから聞いたよ。

コウジ:会っていきなりエリーの名前をだしてきたんだ。

チェン:まあ、そうなるよ。コウジの話はティナに筒抜けだし。


コウジはダメ元でチェンに質問した。


コウジ:このティナって人はエリーとどれぐらい仲がいいんだ? 

チェン:エリーが妹として、ティナは姉みたいな関係だ。すっげー仲が良かった。


コウジが思っていた以上に、ティナには多くの話が伝わっていた。



夕食会場に着くと、すでにツカサが待っていた。

ツカサは英語ですらすらマリサやティナに挨拶をした。


コウジはツカサにティナがエリーと大の仲良しであることを伝えた。

ツカサは失笑して言った。

「コウジ、リョータとかを呼んでいなくてよかったな。」


ほどなくしてコウジの友人でもあるリー(韓国人)、マイク(イギリス人)、ジョセフ(レバノン人)もやってきて、食事の席は和やかに始まった。


マイクが言った。

「コウジ、お前先月もカタール航空の人たちと飲んでいなかったか? 忙しいやつだな(笑)」

ジョーク混じりのいじりにコウジが言い返そうとしたときに、ティナがスマホをコウジに見せてきた。


ティナ:ほらほら、エリーちゃんですよ〜


コウジは右手でスマホとコウジの顔を遮った。

それからもティナのコウジいじりは続いた。


コウジ:ティナは僕とエリーの話をどれぐらい知っているんだ?

ティナ:そうねぇ、いろいろ知っているわよ(笑) ここで話したら時間が足りないわ(笑)

たしか、コウジを迎えに空港に行った日があったわよね? あの日も私とエリーは一緒にいたわよ。

そんな人とここで会えるなんて嬉しいわ(笑)


ツカサ:コウジ、ティナさんはお前とエリーの話は相当知っていそうだな(笑)

アヤコ:コウジさん、なんだかいろいろな思い出がドーハにあるんですね。

アヤコはニコッと笑い、デザートのティラミスをゆっくりと食べていった。



マリサのWelcome Partyのつもりが、一転してコウジがティナにいじられる会になってしまった。

コウジは申し訳なさそうにマリサらをみたが、マリサとフィリピン人クルーはマイクやリーなどと会話を楽しんでいた。

コウジが心配するほどでもなかった。

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