第36話 協力者

2016年3月 コウジのもとに、本社から1人の男性から連絡が入った。


中山エイジという人物だった。

中山はコウジに連絡がとれると、躊躇なく尋ねた。


「コウジさん、あなたが中東に興味があると聞きまして連絡をしました。

 少し、会話できるお時間ありますでしょうか?」


コウジは落ち着いたトーンではあったが、もしや と期待した。そして、勿論ですと返信をした。

コウジは、3日後にオンラインで中山と会話することになった。


中山:コウジさん、はじめまして。海外事業部の中山です。

コウジ:わざわざご連絡ありがとうございます。でも、どうして私に連絡をされたのでしょうか?


中山はすぐに話を切り出した。

中山:コウジさんが、中東に興味があると聞きましてね。私は、アフリカと中近東を担当しているので、ぜひともコウジさんには中東に興味があるとのことで一度会話しておきたいと思いましてね。


コウジ:わざわざありがとうございます。今、私はカタールを調べていまして、昨年企画書を提出したことがあるんです。


中山:えぇ、そうだったのですね。それは知りませんでした。

コウジ:ですが、企画内容が甘く、中々承認ももらえていないのです。なので今また企画内容を練り直しているところです。


中山:そうだったのですね。

コウジ:はい、でも企画を練り直して次またボツとなったら、もうチャンスはないのでは?と心配していて中々出せる気にならず。


中山:その企画書、今ありますか?

コウジ:はい、一応 前回からだいぶ細かく作り込みまして、この資料です。


コウジは、画面越しに資料を投影してみせた。中山の顔が少し険しくなった。


中山:・・・初見、いけそうだな。これ

コウジ:・・・本当ですか?


中山:これ僕に送ってもらっていいですか? 僕から役員にフォロー説明しますよ。

コウジ:はい、ありがとうございます!


コウジにとって思わぬ協力者が現れたのだった。コウジは、すぐに資料を中山に送った。


数日後、コウジに中山から連絡が入った。


「コウジさん、近々 私もカタールに行こうと考えています

 次、コウジさんがカタールに行かれる時期はいつですか?」


コウジは手帳のカレンダーをみて言った。

「来月中旬です! 実はカタール人のパートナーとなり得る人物を一人見つけまして

 どうやって会話しようかを考えているところでした」


中山は驚きながら答えた。

「あら、もうそんなところまでたどり着いたのですね。

 それなら僕と、アラビア語が喋れるスタッフも一緒にカタール行った方がいいですね」


急転直下の展開に、コウジは興奮気味に確認を続けた。

「ありがとうございます! そのカタール人をお繋ぎした方がいいですか?マタルという人物ですが」


中山からは勿論と短く返信をもらった。コウジは、マタルの連絡先を中山に連携した。


コウジにとって予期せぬ協力メンバーと、カタール出張は決まった。


4月 コウジはチューリッヒ、ドバイ、アブダビ、ドーハと4つの都市をまわることになったのだ。 わずか7日間で。

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