概要
初夏にさしかかった五月の半ば、僕らは同級生の妹である日野崎巴という少女からの頼みで、彼女のクラスメイトの相談を聞くことになった。
そのクラスメイトの少年、高輪くんの話によると部活の顧問が部室の倉庫に保管していた私物が無くなったらしい。しかもその直前に出入りしたのは高輪くん自身だという。彼はなんとかして見つけ出してほしいと僕らに頼んできたのだが……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!いずれ古典になるだろう
すごすぎる。すごすぎてしばらく言葉が出てきませんでした。
本作品は三つの中・短編で構成されています。
一本目の『盗まれた壺と「バランスブレイカー」』は、さまざまな役回りのキャラクターが同じひとつの心理現象に行動を左右させられている点で、非常に趣向の凝らされた学園日常ミステリとして完成されていました。
続けて読み進めた『レトロニムと幻の広場』は、時の流れ、それに伴う呼称の変化をテーマとしており、それが学園という舞台やそこに集う生徒らの感情の機微が絶妙にマッチしていました。
末尾を飾る『騙られたエースと欲求の二重性』では、前章までの流れをそのままに、これまでよりも格段に相対的な評価を浴びせられ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「日常の謎」を「雑学」で紐解く高校生たちの物語
学園ミステリというと、シリアスな内容が多いように思うのですが(あるいは私の趣味が偏っているだけかもしれません)、こちらのシリーズは実に爽快です。
各短編の冒頭で、主人公たちの雑談に織り交ぜられる「身近なテーマ」。
主人公たちが追う「日常の謎」とは一見関連がなさそうに思えるのに、読み進めるうちに鮮やかに絡めて物語に落とし込まれている……感服いたしました。
文章もテンポよく読みやすく、個性的な登場人物たちの会話も微笑ましい。
それでいて内容も濃いのです。お得満載です。
書籍やインターネットから様々な情報を仕入れても、小説の中で生かすことはとても難しいと日々実感している中、作者様の知識量と表現力…続きを読む - ★★★ Excellent!!!期待を裏切らない学園ミステリの最新作!
このシリーズは学園ミステリとして一番好きな作品です。
学校で持ち上がるちょっとしたトラブル、その背景には今を映し出すような動機があり、社会問題、心理学、を織り交ぜながら事件の真相に迫っていきます。
このトリビアに満ちた解決編が面白いと同時に、なんというかすごく勉強になるなと、毎度思わせてくれます。
そこにあるのは普遍的な人間・社会の姿であり、現代の人々が抱える奇妙な姿でもあります。
そういったテーマをはらみつつも、物語は二人の主人公によって軽快に楽しく進んでいきます。
特にこのシリーズでは二人の距離も縮まって、鈍感月ノ下君と、気づいてもらえない星原さんのやりとりがまたほほえましい。
読みやす…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ひらめきと観察力×知識と例えを得意とする探偵たちの夏!
放課後対話篇シリーズ第6弾!
今回も、ミステリーも例えもとても面白い!
『盗まれた壺と「バランスブレイカー」』
一部生徒の校則違反によって、厳しくなってしまった校則。スイーツバイキングに行けず、しぶしぶ下校している月ノ下くんと星原さんのもとに、高輪くんという一年生が、事件の相談にやってくる。
それは、部活の先生が大事にしていた壺を盗まれたことについて。なんと高輪くんが所属していた陸上部は、件の校則が厳しくなった原因の生徒たち。部活の先生にこっぴどく絞られた部員たちは、先生に復讐するため、壺の悪戯をすることに。持ちかけられた高輪くんは、「鍵を閉めた振り」をして加担することに。しかしその後、…続きを読む