『都落ちギャル(血統書付き)に懐かれた話』は、教室の空気を支配していた「女王」が転げ落ち、輪の外にいた少年がその余波を正面から受けてしまうところから始まる。主人公の乾いた独白と、京華の強引さがぶつかり合い、笑えるのに目が離せない調子で進む。『血統書付き』という言い回しが、本人の誇りと、周囲の視線の残酷さを同時に刺してくるのも巧い。
序盤で印象に残ったのは第3話の校舎裏だ。捨てられた教科書に「藤堂」の名前を見つけて、主人公が黙って拾い上げる。人気のない茂みで京華と鉢合わせし、枝を踏んで気配が割れた瞬間、彼女は噛みつくように距離を詰めてくるのに、会話はどこか間が抜けていて、やがて京華が笑ってしまう。助けた側も助けられた側も素直になれないのに、そこで関係の芯が生まれてしまう。この場面だけで、京華が「哀れな被害者」でも「単なる加害者」でもなく、誠人もまた冷めた傍観者のままではいられないことが伝わる。
第10話まで読む限り、物語は「転落の後始末」だけに留まらず、音楽や学園祭ライブへと流れを作っていく。屋上の昼休み、ギターの手触り、歌声が空気を変える瞬間が挟まることで、京華の強さが“支配”から“表現”へと形を変えていく予感が出る。軽口が多いのに、ふとしたところで寂しさが漏れ、読後に残るのは案外まっすぐな青春の熱だ。
連載156話のうち、私はまだ第10話までだが、この時点で「都落ち」の意味が、単なる立場の失墜ではなく、誰と組むかを選び直す話として立ち上がっている。ここから仲間集めがどう転ぶのか、京華の強さがどんな形で戻るのか、続きを追う動機がはっきり残った。空気の悪い教室を抜けて、2人だけの会話が少しずつ外へ開いていく、その過程を見届けたい。
注……最初の数話を読んだ時、★5つ付けたいと思った。勢いがあり、格好の良い作品だ。僕には描けない。形をつけるため、10話まで読んでレビューしてみた。勿論最後まで読ませてもらいます。
タイトルのインパクトが強く、コメディ寄りの作品かと思うと、実際は落ち着いた日常描写が中心で、ギャルヒロインと主人公の距離感を丁寧に描いた作品だと感じました。
ギャルという属性も記号的になりすぎず、都会から地方へ来た背景が自然に会話や振る舞いに滲み出ており、「血統書付き」という表現がキャラクター付けとして機能しています。主人公に懐く流れも急展開ではなく、日常の積み重ねの中で少しずつ関係が築かれていく点が印象的で、地方のゆったりした空気感と、都会的な感性を持つヒロインの対比が作品全体の雰囲気を作っており、派手な展開がなくても読み進められます。
落ちていく者の孤独と
掬い上げる者の静かな温度──
この物語は
そんな二つの呼吸が
そっと触れ合う瞬間から始まる。
かつて校内の頂にいた少女は
ある日音もなく世界の端へ追いやられる。
そこへ寄り添うのは
誰より目立たず
しかし誰より真っ直ぐに人を見つめる少年。
彼の手には
音を紡ぐためだけに磨かれたギター。
彼女の胸には
誰にも言えぬ痛みと
まだ名もない渇望。
ふたりの距離は
恋とも友情ともつかず──
屋上の風や街のざわめき
深夜の息遣いに調和するように
静かに、しかし確実に変化していく。
きらびやかでも劇的でもない。
けれど、だからこそ──胸に残る。
〝再生〟の物語とは
こうして始まるのだと教えてくれる一作です。
孤高を好む少年と、女王の座から滑り落ちた少女。ともすれば交わることのなかったはずの二人の出会いが、こんなにもリアルな空気感と、もどかしいほどの距離感で描かれていることに、冒頭から心を掴まれました。
特に、夕暮れの校舎裏で、ゴミ箱に捨てられた教科書を手渡すシーン。ぶっきらぼうな優しさと、それを受け取った時の彼女の心情が痛いほど伝わってきて、ここから二人の時間が動き出すのだと確信しました。
転落してもなお、その魂の気高さを失わない藤堂京華という少女の人間的な魅力。読み進めるほどに彼女を応援したくなるのは、きっと私だけではないはずです。無愛想な清水くんが、そんな彼女を放っておけなくなるのも自然な流れだと感じました。
そして、バンド活動が始まってからの熱量には圧倒されます。二人が音を重ね、言葉にならない感情をぶつけ合うことで、互いの孤独を埋めていく。その過程が本当に丁寧に描かれており、彼らの奏でる音楽が、確かに聴こえてくるようでした。
ただ甘いだけではない、少しだけ不器用で、けれど確かな絆で結ばれていく二人の関係が、読後に心地よい余韻を残してくれました。