タイトルのインパクトが強く、コメディ寄りの作品かと思うと、実際は落ち着いた日常描写が中心で、ギャルヒロインと主人公の距離感を丁寧に描いた作品だと感じました。
ギャルという属性も記号的になりすぎず、都会から地方へ来た背景が自然に会話や振る舞いに滲み出ており、「血統書付き」という表現がキャラクター付けとして機能しています。主人公に懐く流れも急展開ではなく、日常の積み重ねの中で少しずつ関係が築かれていく点が印象的で、地方のゆったりした空気感と、都会的な感性を持つヒロインの対比が作品全体の雰囲気を作っており、派手な展開がなくても読み進められます。
落ちていく者の孤独と
掬い上げる者の静かな温度──
この物語は
そんな二つの呼吸が
そっと触れ合う瞬間から始まる。
かつて校内の頂にいた少女は
ある日音もなく世界の端へ追いやられる。
そこへ寄り添うのは
誰より目立たず
しかし誰より真っ直ぐに人を見つめる少年。
彼の手には
音を紡ぐためだけに磨かれたギター。
彼女の胸には
誰にも言えぬ痛みと
まだ名もない渇望。
ふたりの距離は
恋とも友情ともつかず──
屋上の風や街のざわめき
深夜の息遣いに調和するように
静かに、しかし確実に変化していく。
きらびやかでも劇的でもない。
けれど、だからこそ──胸に残る。
〝再生〟の物語とは
こうして始まるのだと教えてくれる一作です。
孤高を好む少年と、女王の座から滑り落ちた少女。ともすれば交わることのなかったはずの二人の出会いが、こんなにもリアルな空気感と、もどかしいほどの距離感で描かれていることに、冒頭から心を掴まれました。
特に、夕暮れの校舎裏で、ゴミ箱に捨てられた教科書を手渡すシーン。ぶっきらぼうな優しさと、それを受け取った時の彼女の心情が痛いほど伝わってきて、ここから二人の時間が動き出すのだと確信しました。
転落してもなお、その魂の気高さを失わない藤堂京華という少女の人間的な魅力。読み進めるほどに彼女を応援したくなるのは、きっと私だけではないはずです。無愛想な清水くんが、そんな彼女を放っておけなくなるのも自然な流れだと感じました。
そして、バンド活動が始まってからの熱量には圧倒されます。二人が音を重ね、言葉にならない感情をぶつけ合うことで、互いの孤独を埋めていく。その過程が本当に丁寧に描かれており、彼らの奏でる音楽が、確かに聴こえてくるようでした。
ただ甘いだけではない、少しだけ不器用で、けれど確かな絆で結ばれていく二人の関係が、読後に心地よい余韻を残してくれました。
12話まで読んだレビューです
キャラクターの心情描写が繊細で、特に主人公の不器用さがリアル。誰にも心を開かなかった二人が音楽を通じて変わっていく過程に、何度も胸が熱くなりました
会話のテンポが絶妙で、クスッと笑える場面と切ない場面のバランスが最高。特に二人の掛け合いは読んでいて飽きません
「一人でいるのも悪くない」と思っていた主人公が、誰かと一緒にいる意味を見つけていく展開は、読後感がとても温かいです
バンド結成に向けて動き出すこれからの展開が楽しみで仕方ない!音楽好きな人にも、青春ものが好きな人にも、強く推せる作品です
10話まで読んだ感想になります。
とにかく読んでいてワクワクが止まらない作品でしたた!
最初は静かな日常から始まるのに、気づけば人間模様の駆け引きや、思わぬ友情の芽生えに引き込まれてしまいます。
キャラクターたちのやり取りがとても生き生きしていて、会話ひとつとっても空気感や温度が伝わってくるんです。
特にヒロインの行動力と強引さには、最初はちょっと面倒くさそうに見えても、だんだんと「この子、めちゃくちゃ愛おしいな」と思わせられてしまう不思議な魅力があります!
また、舞台となる学校生活の描写がリアルで共感しやすく、教室の空気や放課後の何気ない瞬間に、懐かしいと感じる人も多いはず。
そこに恋愛とも友情とも言い切れない微妙な関係性が差し込まれて、ページをめくる手が止まらなくなります。
ハンバーガーを食べるシーンや音楽を通じて気持ちが通じ合うシーンなど、日常の一コマなのに胸が熱くなる場面が多く、読み味も爽やかです。
先の展開を想像すると期待しかなく、この二人がこれからどうなっていくのかを追いかけたくなる中毒性があります。
ドラマチックな青春ストーリー、思わずおすすめしたくなる作品です!
※読み合い企画からのレビューです
ひょんなことからスクールカーストの最上位から転げ落ち、いじめられるまでになったヒロイン・京華が興味を抱いたのは、クラスにいてもいなくても変わらないような無口な主人公・誠人だった──という導入の本作品
ぼっちと嫌われ者の二人で始まるこの物語の第一章は、誠人の幼馴染みと三人で組んだバンドが学園祭で演奏するまでを描いている
本作品のヒロインは、非常に珍しい
何故なら、物語冒頭の京華の態度は、カースト最底辺まで落ちても仕方がないと思えるほどに傲慢で、自分勝手で、わがままだからだ
凡百の小説であれば悪役のまま終わるか、良くても改心が描かれる程度だが、本作品では見事にヒロインを務めている
それも、自分勝手でわがままなところはある程度そのままに、にも関わらず可愛らしく思えるように書かれているのだから、作者の腕の非凡さが窺えるだろう
その文章力の高さが如実に表れるのは、クライマックスの演奏シーンだ
当然だが、小説を読んでも音は聞こえない
小説にとって演奏シーンは鬼門であるはずなのに、まるで読者自身がギターを掻き鳴らしているような、ギャリギャリと指に響く弦の感触が伝わるような、圧倒的なリアリティが目から脳にぶち込まれる
こんなシーンをカクヨムで読まされるとは思ってもいなかったので、まさに圧巻だった
是非、彼らの等身大の青春を楽しんでみてほしい
時間の無駄には決してならないはずだ