このシリーズは学園ミステリとして一番好きな作品です。
学校で持ち上がるちょっとしたトラブル、その背景には今を映し出すような動機があり、社会問題、心理学、を織り交ぜながら事件の真相に迫っていきます。
このトリビアに満ちた解決編が面白いと同時に、なんというかすごく勉強になるなと、毎度思わせてくれます。
そこにあるのは普遍的な人間・社会の姿であり、現代の人々が抱える奇妙な姿でもあります。
そういったテーマをはらみつつも、物語は二人の主人公によって軽快に楽しく進んでいきます。
特にこのシリーズでは二人の距離も縮まって、鈍感月ノ下君と、気づいてもらえない星原さんのやりとりがまたほほえましい。
読みやすさと構成の妙は作者さんならではの持ち味。
ぜひシリーズ全部読んでほしい作品です!
放課後対話篇シリーズ第6弾!
今回も、ミステリーも例えもとても面白い!
『盗まれた壺と「バランスブレイカー」』
一部生徒の校則違反によって、厳しくなってしまった校則。スイーツバイキングに行けず、しぶしぶ下校している月ノ下くんと星原さんのもとに、高輪くんという一年生が、事件の相談にやってくる。
それは、部活の先生が大事にしていた壺を盗まれたことについて。なんと高輪くんが所属していた陸上部は、件の校則が厳しくなった原因の生徒たち。部活の先生にこっぴどく絞られた部員たちは、先生に復讐するため、壺の悪戯をすることに。持ちかけられた高輪くんは、「鍵を閉めた振り」をして加担することに。しかしその後、イタズラする前に、壺は盗まれていて…。
さらにSNSでは、誰かが盗んだことを自慢げに話し、総叩きされていた。
持ちかけてきた部員たちにはめられたのではないか、と思った高輪くん。果たして、壺の行方は?
サブタイトルの『バランスブレイカー』が2転3転するミステリー!
『レトロニムと幻の広場』
言葉とはその時代の状況や価値観が流転する、生き物のようなものだろう――。
月ノ下くんと星原さんは、新聞部のエース清瀬さんと、バスケ部マネージャーの大森さんを見つける。うっかり巻き込まれ体質の月ノ下くんは、大森さんに「『見えない広場』を探して欲しい」と頼まれた。
バスケ部に残っている『オカルト研究部活動記録』のディスク。そこに残っていた、反転させると炙り出される文字。
その内容は、恋愛成就のおまじないで、筆者は意中の相手と行ったらしい。それを見つけた大森さんは、そのおまじないをやってみたいが、おまじないの場所である『袖振り広場』が分からないという。
『袖振り広場』がわからないという大森さんに、首を傾げる月ノ下くん。しかし星原さんは、自分たちが知っている『袖振り広場』とは違うことに気づく。
月ノ下くんが調査に乗り出すと、なんと候補になるものが二つ。どうやら、新入生を部員に誘っていたことからつけられた名前らしい。果たして、彼らは目的の『袖振り広場』を見つけられるのか?
歪んでしまった『袖振り広場』の本来の意味が明らかにされた時、自信のない大森さんの運命やいかに?
『騙られたエースと欲求の二重性』
SNSで、ちょっとした有名人になった千駄木千里くんの依頼は、「自分になりすましたヒーローの正体を知ること」。
ロードワークの際、道路に飛び出した犬をとっさに助けたのは、別にいる。しかも、その「なりすまし」は、千駄木くんの行動をトレースするような投稿をしていた。
嫌がらせのためになりすますのではなく、評価を与えるためになりすます『ヒーロー』は誰なのか? また、その目的は?
その背景を追っていくと、真相は意外なところにあった……。
本物より本物らしいものが称えられる世の中。
表面より奥にある、『本物』のニーズとは、なんなのか――。