光は嫌いだ。この醜い全身を明るみにしてしまう。
自身の醜さを見せたくなかった蜥蜴は、世界を拒絶し、友人にもその姿を見せず床下に隠れていた。
そんな中、蜥蜴は床下である蝶と出会う。それは蜥蜴が大嫌いな相手・蛙が狙っていた獲物だった。
翅を痛めた蝶は、蜥蜴にとってとても美しく見えた。しかし、夜に蛙が来ることに気づき、蝶に警告する。
蝶は飛び立ち、蜥蜴は彼女が二度と来ることは無いと思っていたが……
失うのが怖いのなら、何も得なければいい。
けれど、それを知ってしまったら、もう後戻りは出来なくなる。
寂しさゆえに、恐怖を抱えながら、どれだけ打ちひしがれることになったとしても、世界に手を伸ばすのでしょう。
そしていつか、多くのものに囲まれる夢を見る。
大丈夫、きっと世界は君の味方だ。
イソップの寓話ほどシニカルでなく、ギリシャ神話ほど悲劇的でなく、グリム童話ほど生々しくなく、アンデルセンほど善良でない。そんな不思議なバランス感覚のあるお話です。
蜥蜴の苦しみから魂の再生への描き方にもですが、蛙の蜥蜴に対する執着心や支配欲になぜか惹きつけられてしまいました。彼も蜥蜴を屈服させたかったのではなく、本当は理解し合いたかったのに方法を間違えてしまっただけなのではないかと言う気がしてなりません。人間社会でも往々にしてこのようなことは起こってしまうからなのかもしれませんね。
「グルステイン物語」はまだ読ませて頂いていませんが、また違った楽しみ方があるそうですので、折を見てお邪魔させて頂こうと思っています。