第50話 ダンスパーティー
この夏休みをフルに使ってあちこち挨拶をして回る計画。
そのほとんどをミリーに任せてきたが、完璧な計画だった。
ジパングを発った後は少しだけ観光ということで、傭兵国家グロウリーにあるロイド先輩のところや魔法国家エウシュリーのイラ先輩の家にも遊びに行った。
どちらも名家だけあってモテるらしく、家には恋人がたくさんいてイチャイチャした。
当然と言えば当然なのだが、学園の彼らを見ていると少し意外に思う。
凄く親近感が沸き、その日の夜は男同士で語り合うと仲良くなれ、また学園で、とそれぞれの国を発つ。
そしてアリスの実家、オルフェウス王国のフォルセティ公爵家に行くと……。
「よくやったアリス! さすがは我が娘だ!」
「あ、ははは……恥ずかしいよー」
父親に抱きしめられて恥ずかしがるアリスが見れた。
まあゲームでも知っていたが、彼女は溺愛されている。
結局のところ、自分の血筋を気にしてるのは本人だけなのだった、ということだ。
セリカの家やオウカの家はリンテンス家から遠いからそこまで影響も大きくないが、オルフェウス王国からすれば俺は隣国の未来を担う人材。
フォルセティ公爵も俺の噂は知っていたようで、自分の家と繋がれたことを大いに喜んでくれた。
まあこの大陸で好き好んでリンテンス家と敵対したいと思うような家はいないけどな。
その後は盛大なパーティーが始まった。
王国中から有力貴族や大商人たちが集まり、代わる代わるに俺と話をしていく。
そのほとんどが覚えを良くしようとするだけだが、中には俺を見極めようとか、利用しようとして近づいて来たやつらもいた。
「ふふふ……」
そしてそういうのはだいたいレオナに見破られて、そのままずるずるとこちら側に利用される立場になる。
うん、政治的なことはもう任せちゃおうか。
おかげで国外に縁も出来たし良しとしよう。
アリスも令嬢たちに囲まれて、どんな縁で繋がったのかなどを聞かれまくっている。
そして困った顔をしていた。
そりゃあ過程はともかく、最終的に俺の情事を覗き見しまくってたら自分のやることになった、なんて言えないよな。
本当はこのあとミリーの実家にも行こうと思ってたのだが、向こうからやって来た。
そして凄まじく腰の低い状態で俺に感謝の言葉を告げて、今は家族団欒を楽しんでいる。
一通りの面会を終えて、バルコニーでのんびり風に当たっているとシンシアが酒を持って近づいて来た。
「なんだかクロード君の存在が、どんどん大きくなっていくね」
「そりゃあこれだけ勝利の女神がついてくれればな」
酒を受け取り、二人で屋敷の外を見る。
さすが公爵家だけあって、素晴らしい景観だ。
蒼色の少しセクシーなドレスで着飾った彼女は、銀髪とよく映える。
「そのドレス、似合ってるね」
「ふふ、ありがと」
お酒に酔っているからか、いつもより少しだけ顔が紅い。
さすがにここはアリスの実家で、主役も彼女だからここでのイチャイチャは避けるが、もしそうでなかったらこのまま手を出してしまっていたかも知れない。
「もうすぐ夏休みも終わっちゃうなぁ」
「ああ。あとはオルガン王国に戻って、ミストラル公爵家に行くだけだな」
レオナの件、ソルト王には今更挨拶に行く必要もないし。
というかこの間ちゃんとしたから問題無いはず。
カルラ姉さんはブルーローズの名を持つとは言え平民なので、さすがに俺から挨拶に行くわけにもいかないから、それで全員だ。
「それなんだけど、レオナ様が根回しをしたから、王城に来るようにだって」
「ん? そうなのか?」
「うん。それでリンテンス家とかも集めて、ここみたいに盛大なパーティーを開くんだって」
なるほど。
まあこれだけ大陸中を巡って紹介しまくってたら、大元の国でやらないわけにはいかないか。
それに学園を卒業したら俺も領地を持つ身。
今のうちに国内の地位を盤石にしろ、ってことだろう。
「でもよく考えたら、俺まだ一年生なんだよなぁ」
「ふふふ、そうだね。だけどクロード君はもう立派な貴族だよ」
そうは言うが、あと二年半はのんびり学園で楽しみたい。
それでその後は領民が住みやすい土地になるよう頑張って、あとは昔からの夢である可愛い嫁たちと悠々自適に過ごすのだ。
「あ、ダンスが始まってるね」
「シンシア、俺と踊る?」
「ん・ー……そうしたいのは山々だけど、今日は譲ろうかな」
そう言うと、こちらに緊張した様子のアリスが近づいてきているのが見えた。
そんな彼女を応援するように、令嬢たちが背後から声をかけている。
シンシアはそんなアリスを可愛い妹でも見るように、微笑んでいた。
行ってこい、ということだろう。
俺がアリスの前に立つと、いつもの元気な様子が嘘のように顔が固い。
「クロード君……あのね」
「俺と踊ってくれますか、レディ」
「……はい、喜んで」
そうしてダンスパーティーが始まり、各々が男女ペアとなって踊り出す。
その中心にいるのは、俺とアリスの二人だった。
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