第7話 悪役貴族たちを支配下に置いていく
結論から言うと、ブロウの持ってきた特ネタはやっぱり厄ネタだった。
いや、俺がそういうやつらの情報を集めろって言ったからその通りにしたんだろうけど……。
ミリーみたいに入学したての弱小貴族の女子が、上位貴族に呼び出されていた。
目的はもちろん、このまま自分の好きなように遊ぶためだろう。
「そこまでだ!」
「なんだお前ぇ⁉」
そんな目障りな蛮行を許すわけもなく、俺は声を上げる。
また倉庫で。
ちょっと埃が溜まっていてネズミとか走ってる感じの、しかしブロウが集めていた場所とは違う倉庫。
というかお前ら貴族なのになんでいちいち汚い倉庫なんかに集まるんだよ衛生面とか気にならないのか!?
しかもまだ入学したてのくせに、ちゃんとこういう場所を見つけてくるとかなんなのお前らまじで。
「とりあえず、死にさらせぇぇ!」
「ひ、ひぃぃぃぃ⁉ なんなんだよお前はぁぁぁ」
「僕を誰だと思ってる⁉ アイアン子爵の――」
「子爵程度でイキってんじゃねぇぇぇ!」
そうしてブロウたちにしたよう拳で叩きのめす。
腕を折り、足を折り、鼻を潰し、心を折る。
そうして全員を虫の息にしたあと、一人ずつ呼吸が安定する程度に回復させて、再教育。
何度も徒党を組まれたり、復讐を考えられたりしたら面倒だからな。
「ミリー、そっちは大丈夫か?」
「はい! 最悪の状況は避けられてます!」
「そうか……」
襲われていた女子生徒はミリーに任せ、俺は倒れているリーダー格の男の髪を掴み、顔を持ち上げる。
「チンコ潰されるか、二度とこんなことをしないと誓った上で、同じようなことがないように動くか、今すぐ決めろ」
「二度としませんから許してください!」
叩き潰され、俺の地位まで理解出来た男は涙目でそう叫んだ。
俺の背後ではチンコ頭のブロウとその取り巻きが股を抑えているが、まあ下半身獣のこいつらはトラウマになってるくらいが丁度良い。
「さて、それじゃあこれで……」
「リンテンス様! ご報告があります!」
「……」
なんなんよマジで……。
新しくやってきたブロウの取り巻きが切羽詰まったような声を上げ、俺はそれを聞くことにした。
結果、放課後になって下級貴族の女子生徒に手を出していた上級貴族は四人。
取り巻きを含めれば二十人弱というところか。
なんとか全員、ギリギリのところで助け出すことが出来たが、俺一人では回りきれなかったので、ブロウたちにも一か所向かわせた。
そうじゃなければ間に合わなかったかもしれない。
「なんなんだよこの学園⁉ 凌辱系のエロゲじゃねぇんだぞ!」
「ぎゃぁぁぁ⁉」
最後の一人を再教育し、俺は思わず叫んでしまったが仕方ない。
『はでとる』はあくまでも全年齢向けのゲームだ。
ちょっとグロやエロっぽい雰囲気はあるが、それも含めて最後の一線などは越えない仕様になっている。
だというのに、こうして入学してみれば上級貴族が下級貴族に手を出そうとするやつらの多さよ!
避妊魔法があるとはいえ、最低過ぎるだろうが!
「ああクソ……おい、もう今日はこれで終わりだな?」
「はい! あとは計画が立てられているのは明日と明後日ですね!」
「……」
ブロウの取り巻きの言葉に俺は絶句する。
本当にどうなってんのこの学校……。
これじゃあ手が足りない。
というより俺の精神面が追いつかない。
教師に頼るか? だがそもそも、このような状況になっているということは、教師陣も黙認している可能性がある。
まあとはいえ、教師を責めるわけにはいかないか。
なにせ主犯は普通の貴族では手が出せない上級貴族。
たとえ後継者でない次男、三男であっても、有力者であることは間違いない。
しかもこの学園は様々な国の貴族が集まっている。
下手を打てばその時点で戦争や賠償責任になってもおかしくないからな。
襲ってる側も節度を守って……いや守ってないんだが……。
「とにかく、こいつらも自国か弱小国家でかつ立場の弱い生徒を狙ってるんだろうが……」
そういうところが微妙にこすいんだよな。
この世界において貴族は絶対的な特権階級を持つ。
そんな風に育てられてきたのだから、これもまた仕方ないと言えば仕方が無い。
とはいえ――。
「俺の目の届く範囲でそんな胸くそ展開許すかよ……おいブロウ」
「はい!」
なんかちょっと嬉しそうなんだけど、止めて欲しい。
お前いちおう強姦魔側で俺に半殺しにされたの忘れるなよ。
忠臣みたいな雰囲気出しても許してないからな。
「今から今日叩きのめしたやつらを全員集めろ。そいつら組織して、明日以降の蛮行を全部止めてやる」
「わかりました! おい、行くぞ!」
そうして集められた男子生徒たちは、俺の立場、そして実力を目の辺りにして逆らう気力もわかないのだろう。
俺のことを見ることすら恐れるように土下座をし、震えていた。
そこからさらに恐怖を植え付けるため、俺は魔力を解放する。
「俺は今、とてつもなく不快に感じている」
「ひっ……⁉」
「あ、あ、あ……」
この世界は地球とは違う。
強い者はたとえ万の軍勢を集めても、本物の強者を殺すことなど出来ない。
そしてラスボスに鍛え上げられた俺は、自分がそのくらいは強い自覚もあるし、五秒もあればここの人間全員を皆殺しに出来る。
「いいかお前ら。ここは多くの貴族が集まる学校だ。獣の集まりでもなければお前らが好き勝手していい遊び場でもない」
「「「っ――⁉」」」
恐怖の大魔王を前にしているように、土下座をしたまま決して顔を上げず、言葉が出ない貴族たち。
その前に君臨する俺。
……なんか主人公の立場としておかしくないか?
端から見たら残虐系ラスボスムーブな気がしないでもないが、まあやっていることは権力を笠に好き勝手女子生徒を襲っている輩の成敗なので、正義の味方と言っても良いだろう。
とりあえず悪役貴族たちを支配下に置いてコントロールすることで、今後の学園生活を平穏に過ごしたい。
「俺の目の届く、耳に入る範囲でこういった蛮行は許さん。たとえ相手が他国の貴族だろうが、王族だろうが、人としてあるべき在り方を忘れ、獣となったやつは潰す」
まあなにか合っても正当性さえあれば多分ソルト王が庇ってくれるだろう。
両親も俺のことを神童と扱ったように、結構普通に愛してくれてるからな。
間違ったことさえしなければ大丈夫なはずだ。
庇ってくれなかったら力ずくで解決する必要があるが、そもそもリンテンス家に逆らうような馬鹿な貴族は多くない。
それこそオルガン王国の対立派閥くらいだろう。
「お前達には今後、俺の手足として働いて貰う。今日の自分の行いを後悔し、学園にいる間は十字架を背負って償い続けろ」
まあ仮に対立派閥のやつがちょっかいをかけて来たら叩き潰すけどな。
こちとら戦争上等。ぶっ潰してやんよ。
「わかったな?」
「「「は、はい!」」」
俺の言葉に反応し、恐怖を宿した声が倉庫に響き渡った。
よしよし、これで明日からはもう少しマシになるはず――。
「騒ぎがあると聞いてやって来てみれば……これはいったい、何事ですか?」
そう思った瞬間、女性の声が聞こえてくる。
俺がその声の方を見ると、倉庫の入口に一人の女子生徒が驚いた顔で立っていた。
美しい白銀の長髪、宝石のように輝く蒼色の瞳。
白い制服から伸びるすらっとした手足は芸術のようで、その細い腰を何度この手に抱きしめたいと思ったことか。
シンシア・ミストラル。
俺がまず最初に婚約者にしたいと思い、どういう風に交流を深めようか悩んでいた少女と出会ってしまった。
どう考えても最悪な場面で……。
「……」
シンシアは困惑した表情でまず俺を見る。
次に土下座させられて怯えている男子生徒たちを見る。
そして再び俺を見た。
その瞳に籠められた感情は、怒り。
「詳しい話を聞かせてください」
二年後には最年少でオルガン王国の騎士団長になる、現王国最強の生徒、シンシア・ミストラルは、腰の剣に手を添えながら尋ねてきた。
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