第31話 俺か、俺以外か
俺のルーティンはそうそう大きな変化が起こることはない。
早朝、まずミリーが起こしに来てくれるので、彼女の前髪を上げて可愛い瞳を堪能。
もうほぼ毎日やってるのに恥ずかしがって可愛いので、俺のテンションが上がったらそのまま布団の中に引きずり込む。
そしてイチャイチャしたあと、彼女の制服の乱れを整えてから教室へ。
クラスのアイドル的存在であるアリスが元気に挨拶をしてくれるので、そのまま口説きにかかる。
見てる限りこのまま押しきれる気がするが、原作でもお互いを異性として見る切っ掛けのイベントがあるので、少し様子見。
まあこの友人以上、恋人未満みたいな関係も楽しいのでこれ以上は押さないおく。
授業はソルト王の下で学んだことばかりで退屈なので、この間に脳内で色んな相手と戦闘。
俺がこの世界で最初に考えたオリジナル魔法『マルチタスク』。
過去の漫画やゲームといったものから色んな魔法を作ってきたが、これ以上に便利なものはない。
なにせヒロインたちと日常生活を送りながらでも修行が出来るのだ。
他にも色々と便利な魔法を研究してきたが、さすがに魔法も万能ではなく、再現出来る限界があった。
脳内でカルラ姉さんと接近戦をやってみたが、残念ながら勝てそうにない。
魔法もなんでもありなら最終的には勝てるのだが、一日で終わらないのでやるとしたら長期休みだな。
ソルト王もまだ無理。
というかあの人、俺と出会ってから際限なく強くなっていって原作より強いから、多分今なら単騎で裏ボス倒せるし。
よく二次創作で原作キャラ魔改造とかいうけどさ、ラスボス魔改造しちゃっても誰も得しないんだよな。
そういうのはほら、ヒロインから尊敬されたり、ギャグっぽくするためにやるのであってさ……。
「いや、やるのもありか?」
シンシアとは相変わらず仲良しの恋人関係を築けている。
アリスとは友人関係だし、ミリーは従者として関係良好。
最近どうも不完全燃焼気味なオウカは、相手をしてやればすっきりするだろう。
問題はセリカだ。
俺としては彼女とも仲良くしたいのだが、どうにも警戒されている気がする。
だが彼女は彼女なりに強くなりたい想いがあるし、イラ先輩の下準備が終わるまでの暇つぶし……じゃなくて仲良くなるためにやるのも良いかもしれない。
そうして授業が終わると、いつものように少しだけ回復したブロウがやってくる。
「リンテンス様! ヤバいネタを仕入れてきました!」
そしてそれは、俺をしても本当にヤバいと思うネタだった。
「というわけで四天王のみんなには集まったわけですが」
「なにがというわけなんだよ」
なんの説明もなくいきなり呼び出されたセリカが不満そうな顔をするが、前回の戦いで負けた彼女はちゃんと来てくれた。
まあ強制とはいえ、派閥の長に従わないと下の子たちに示しがつかないからな。
うーん、しかし可愛い。
小さいから余計にそう思うのだが、なんというかとても甘やかしたい。
おっと、今日はそういう日じゃなかった。
「そろそろこの派閥戦争も最終局面を迎えようとしています。例年であれば複数派閥が牽制し合うので、そのままなし崩しに卒業を向かえるものですが……」
「今年は異常事態が起きました。誰かのせいで」
「イラ先輩、ちょっと苛立ってません?」
「忙しい中で呼び出されましたから」
うーむ、この慇懃無礼さは中々癖になるな。
しかし彼には今一番働いて貰っているので離反なんてされたら溜まったものじゃないし、仕方ない。
「まあいいや。イラ先輩の言うように、異常事態です」
「おいおい、そんなの今更だろ? 俺たちを呼び出した理由にならねぇが……」
「カルラ姉さん……ブルーローズ先生が反リンテンス派に加わりました」
俺の言葉が理解出来なかったのか、ロイド先輩とセリカが固まる。
我関せずと刀を磨いていたオウカはまるで犬耳をピンと立てるように反応し、瞳を輝かせながらこちらを見た。
「いや……は?」
「ちょっと待てリンテンス。派閥戦争に教師が参加って、しかもあのブルーローズ先生? いくらなんでも無茶苦茶じゃないかそれは?」
「斬り合えるのですか⁉ あのオルガン王国の剣とまで呼ばれたあの女傑と⁉」
三者三様、それぞれの反応。
まあ言いたいことはわかる。その反応もわかる。
隣ではすでに知っていたイラ先輩が頭を抑えているが、別に俺のせいじゃない、はずだ。
「まあそういうことで、これまでと違い俺は多分カルラ姉さんとの戦いで抑えられることになるから、どれだけ下が戦えるかにかかっているわけなんですが……イラ先輩、現状の戦力差はどんな感じです?」
「そうですね。まず元々のリンテンス派の戦力は、しばらく使い物にならないです。オウカが潰したので」
「ですね。俺も怪我人を無理矢理戦わせる気はないので、彼らには休んで貰うしかないでしょう」
「次に我々の派閥ですが、ほとんど使い物にならないです。オウカが潰したので」
四天王の三人がオウカを見るが、彼女は特に気にした様子は無い。
さて、つまりそういうことである。
この世界の回復魔法は決して便利なものではないので、大怪我を軽く治せるものじゃなく、こっちの派閥はほぼ壊滅状態。
ゲームだと簡単に治るのになぁ……。
「某が全員斬れば良い、ということですな?」
「こっちの戦力がないって話ですよこのお馬鹿」
「イラ先輩、お馬鹿は可哀想だから言ったらダメです」
「クロード様、甘やかさないで下さい。こいつ全然聞く気ないので」
ギロっと睨まれると思わず視線を逸らしてしまう。
オウカはまったく気にした様子は見せないので、庇っただけ損した気分だ。
「とにかく、戦力差は明白です」
「いくらアタシたちが出るって言っても、三学年だって強いやつは結構いるもんなぁ……」
「はっ! たとえそうだろうと、出てくるやつはぶっ潰してやるよ!」
セリカの困った顔に対して、ロイド先輩はそう言うが、彼は決して脳筋ではないので戦力差は理解しているはずなので、鼓舞しているだけだろう。
「しかも僕が出来る限り派閥戦争の舞台を整えながら引き延ばしていたのですが……正直レオナ王女の方が一枚上手でしたね」
「……なにしたの?」
「各国の大貴族を呼び集められました。オルガン王国のソルト王まで来るらしく、もう日程も決まっていて変更することも出来ません」
「マジか……」
相手に教師であるカルラ姉さんがいるからこそ出来る芸当だよなぁ……。
いやまあ、手紙の内容考えたら丁度良かったってことなのかもしれないけど、こっちとしてはとばっちりも良いところだ。
「カルラ姉さんの胃が大変なことになってそうだけど……」
レオナ王女の強権に振り回されてる彼女を想像すると、涙まで出てくる。
「それに合わせて各国の王族も来るとのこと……もはやこれは学園のイベントではなく、大陸の覇権を賭けた戦いと言えましょう」
「俺か、俺以外が戦うだけなのに、なんて嫌な戦いだ」
とりあえずカルラ姉さんが出てくる以上、俺は足止めを食らうのは間違いない。
そしてなんだかんだ、三学年は侮れないし、現状の戦力では足りない可能性が高いので、彼らを強化する必要がある。
「というわけで本題です。俺が皆さんを鍛えるので、命がけで強くなって下さい」
「「……え?」」
「おお!」
なんの話も聞いていなかったロイド先輩とセリカが引き攣った顔をした。
オウカはとても嬉しそうで愛いやつだ。
さあ、あまり時間はないが魔改造の時間である。
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