第3話 夜、クラスメイトの美少女を部屋に呼んだ

 入学式が終わり、簡単な学園案内を終えたあと、生徒たちは学生寮に入ることになる。


 各国の貴族子弟が集まるということもあり、これから生活をする寮は一人一部屋、豪華な部屋で不便などは何一つないものだ。


 男女も共同生活をしているため風紀の乱れはありそうだが、裏では推奨されていることを俺は知っていた。

 まあそういう世界だしな。


 ただし在学中の子作りだけは認められていないため、ヤルなら避妊魔法を使えという話。

 なお、女子は学園に入る前に避妊魔法を覚えてから来るらしい。


 つまり、それだけ学園でそういうことが横行しているということだろう。



 そうして夜、俺は入学式の後に仲良くなったクラスメイトの少女――ミリーを自分の部屋に呼び出した。


「クロード様ぁ……だめ、だめです」

「ふ、この程度でなにを言っているんだ? これからもっと凄いことをするんだぞ」

「う、うぅぅ……」

「お前もわざわざ俺の部屋に来たんだから、覚悟していたはずだ」


 顔を赤らめ、涙目でこちらを見てくるミリー。

 先日クラスメイトになったばかりの彼女は今、俺の指示であられもない姿となっていた。


 ベッドに座った俺が立っている彼女を凝視すると、両手で顔を隠そうとする。

 しかしそんなことを俺が許すわけない。


「もう一度だ」

「う、うぅぅ……」

 

 彼女は俺の言葉には逆らえず、手をおでこに当てて上に上げる。


 ふわっと、一瞬だけ前髪が浮かぶ。そしてまっすぐ露わになった彼女の瞳。丸く愛嬌のあるそれはまるで宝石のように美しい。


「うん、やっぱり可愛いじゃないか」

「や、あぁ……は、はずかしいですぅ」


 とてもエッチな事をしている風だが、実際はただ目隠れしていた前髪を開いて目を見せて貰っていただけである。


 まあ目隠れ少女からしたら、裸を見られること並にエッチなことのかもしれないが……そう考えるとエロく思えてきた。


「あのぉ、クロード様? そろそろ許して……」

「今度はじっくり見させてくれ」


 そう言うとやはり恥ずかしそうに、自分で前髪を上げて瞳を見せてくれる。


 こうして明るいところで髪を上げたミリーは、原作ヒロインであるシンシアと比べても見劣りしない特上の美少女だと思う。

 

 よく考えれば当然だろう。

 ミリーは序盤のチュートリアルを担う存在。

 体験版などでも登場し、最初にちょっとエロっぽいシーンを見せる彼女の可愛さは、売れ行きに直結するものだ。


 そして実際、年間一位の売上を出したということは、ミリーを見たくて買った紳士たちがということでもある。


 ポテンシャルはメインヒロイン級。

 そう考えた俺はさっそく彼女に声をかけ、こうして自分の部屋に連れ込んだのである。


「いいぞミリー。やっぱり髪を上げたお前は、俺が思った通りの可愛さだ」

「う、うぅぅ……」


 この寮は男女関係を推奨しているので、使用人の誰かに言えば男が女を部屋に呼ぶことが出来るし、逆もまた然り。


 とはいえ、こればかりは任意であるため行かないという選択肢もあった。

 その場合はお互いその件を口外してはならないというルールもある。


 もし行かなかったことを公表されたり、権力を笠になにかを仕掛けてくると、寮に存在する特殊部隊なるものがお仕置きをしてくるらしい。


 もっとも、ミリーからすれば他国とはいえ侯爵家の俺の権力はとても高い。

 そんな高位貴族から呼ばれたら、たとえ寮や学園が守ってくれると知っていても、逆らえないものだ。


 まあ、やってるのは前髪を上げさせてるだけだがな!


「ど、どうしてクロード様はこんなことをさせるんですかぁ……」


 目隠れ少女の目を見るという悪行をしたいと思ったからです。

 とは言えないので、もう一つの理由を伝えることにする。


「お前を一目見たとき、運命を感じた」

「う、運命……?」

「ああ。いずれ色々な男に群がられるだろう未来を見て、しかしそうなる前に手に入れたいと、そう思ったんだ」

「っ――⁉」

 

 妙にキザったらしい言葉遣いはわざとである。 


 貴族なんて制度がまだある世界観だけあって、この世界の女性たちはド直球な言葉の方がしっかり伝わるらしい。

 恋の駆け引きなどより、劇場などで開かれる熱烈な演劇に恋する女の子たちなのだ。


 ――だから女の子相手にはぐいぐい行くのが正解よ。


 と、リンディス王妃に教えて貰った。

 学園で美少女たちにハーレム作りたいんですって相談したら何故か凄く協力的だったのだ。


 こっちがドン引きするような強引な手もたくさん教えてくれて、あの人のほほんとした見た目なのにソルト王を手に入れるためにどれだけ女性たちと激しく戦ってきたんだと思ったほどである。 

 

「わ、私なんかに男の人が群がる未来なんて、来ないですよ……」

「来る」


 なにせ鬼畜系の悪役が彼女を襲うからな。


 その結果、ミリーは多くの男に酷い目に合わされるし、本来なら救うことも出来ない確定された運命。


 真っ直ぐ見つめてやると、すでに露わになった瞳が揺らぐ。


「あ、うぅ……私がそんなにモテるなんて信じられないなぁ……えへへ。でもクロード様格好良いし、侯爵家でお金も持ってるし、神童なんて言われてて魅力的だし断る理由もないし……」


 小さな声でなにかを呟いているが、聞こえなかった。

 ただなんとなく、俺のことを褒めてくれているのはわかる。


 ――最後は真っ直ぐ想いを伝えるのが大切なの。


 俺のモテ師匠であるリンディス様の言葉を思い出す。

 彼女の言葉は、絶対間違いないはず!


「余計なことは言わずただ想いを伝えよう。俺の物になれ、ミリー」

「っ――⁉ は、はい……よろしくお願いします」


 チュートリアル、完!


 もしここから先、ミリーに手を出そうとしたやつは侯爵家の名で制裁を加えられる。

 というわけでミリーが酷い目に会う前に保護出来たので、これから彼女は俺のメイドである。

 

「それじゃあ学園を卒業したら、俺の家でメイドを頼む」

「クロード様が望むならこの身体……へ?」

「ん?」


 学園の方針的にも、対外的には生徒同士なので現時点であまり上下関係を見せない方がいいだろう。


 彼女だってこれから恋愛や友人との学園生活を楽しみたいだろうし、学園生活の間は普通の生徒同士で、メイドとするのは卒業後の方がいいかなって思ったんだが……。


 もしかして俺、なにか間違ったか?

 呆然と、なにがなんだかわかっていないような顔をしている。


「おいミリー、なんでそんな変な顔をしてるんだ?」

「……い、いえ、その……クロード様は私を抱いて愛人にしようとしたわけではないのですか?」

「愛人ってお前……」


 たしかに平民相手であればそうなるが、貴族同士なら普通に第二第三夫人といった形で正式な嫁になるんだが……。

 そもそも俺はミリーをそういう目的で誘ったわけじゃない。


「ただ可愛い女の子は俺の手元に置きたいと思っただけだぞ? いずれ家督を継ぐか独立しないといけないからな。そのときに信頼出来る付き人が欲しかったんだ」

「っ~!」


 ミリーがいきなり顔を真っ赤にして瞳からは涙を浮かべ、そしてその場にしゃがみ込んでしまった。

 どうやらなにかを勘違いしていおて、恥ずかしがっているらしい。


「大丈夫か?」

「だ、大丈夫です! 大丈夫ですので、今日のこと忘れてください!」

「それは、メイドになるのが嫌ということか……?」


 ショックだ……悲しい……たとえ権力を持っていても、やはり女の子にモテるのは真の陽キャだけなのか? ゲームの世界なら陰キャだってモテて良いじゃないか。


 この世界に転生してからだって、とにかく神童を演じるために勉強と魔法の鍛錬ばかりをしてきて、ようやく世界を救ったと思ったらラスボス鬼畜英雄王の弟子にされて勉強、魔法、鍛錬ばかりで……。


 俺、勉強と魔法と鍛錬しかしてなくて女の子が喜びそうなこと知らないな。

 そりゃモテないわ……。


「さっきまであんなに自信満々だったのに、そんな急に捨てられた子犬みたいな態度を……あ、でもやっぱり駄目ですよ。私だってようやく夢だった学園に入れて、ここで良い伴侶を見つけないとおうちが――」

「ちなみに条件はこんな感じを予定しているのだが……」

「一生尽くさせていただきますご主人様!」


 元々雇用するつもりだったから給金や待遇などの条件を書いた紙を見せると、いきなり手を握られた。

 ちょ、いきなり手を握るとか止めなさい惚れてしまうやろ!


「それでは明日からでよろしいでしょうか⁉」

「が、学園で生活してる間は普通に生徒で――」

「ご主人様、生徒間でもそういう関係はありますよ? もちろんお給金は発生していますが!」

「そ、そうなのか? まあお前がそれでいいなら別に俺も構わないが……」

 

 なぜか彼女の圧に押されて頷いてしまった。

 まあ、早いか遅いかだけの違いだから構わないんだが、何故急にこんな乗り気になったんだ?


「ぜひぜひ! やったーこれで弟たちに美味しいご飯を食べさせられるー!」


 嬉しそうで可愛いからいいけど。


「では明日、朝起こしに来ますね!」

 

 そうして魅力的な笑顔で部屋から出て行って行くミリー。


 一人残された俺は、とりあえず今後のことについて考える。


「ちょっと素が出てしまったが、これからハーレムを作るにあたって、女子生徒のミリーがいてくれるのはプラスに働く、よな?」


 もちろん原作登場人物だけに拘ろうというつもりはないが、シンシアを見たらやはり原作ヒロインの魅力には抗いかねる。


 そして原作ヒロインたちは基本的に善人だ。


 下級貴族に優しくしていたら評価も高いだろうし、女子が一緒にいたら会話のハードルも下がるはず。

 そうして徐々に親しくなっていき、いずれば恋人になって……。


「ふふふ、楽しみだな」


 鬼畜英雄になる気はない。

 だがこの学園のヒロイン含め、美人で性格が良くて俺のことを好きでいてくれるような子は全員手に入れたい。


 ワガママ? 異世界というか、こういう世界で貴族になったんだから良いだろ別に。

 もっと酷いやつなんていくらでもいるっての。


 あと俺、主人公だし。ヒロインとの縁だってきっと強いだろ、多分。

 世界救ったんだから、それくらいのご褒美があってもいいと思うんだ。


 さあ明日から本番だ!

 俺はこの学園で愛し合える少女たちとイチャイチャしてみせる!


「そういえばさっそくミリーの未来を変えてしまったが……まあいいか。侯爵家のメイドになる方が、原作で酷い目に合うよりずっとマシだろうしな」


 というかまさか、俺のミリーに手を出すやつとかいないよな?

 いたら叩き潰すけど、まあないか。

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