第39話 空のバカンス

 空の旅はとても快適だ。

 なにせここにいるのは王族含めた各国の重鎮達。

 

 飛竜と言っても魔導技術で作られた飛行機のようなもので揺れもなく、用意されたすべてが最高品質であり、本当の意味で空のバカンスを楽しんでいるような状態。


 なにより恋人に囲まれてふれあい続ける日々は、俺の疲れた心を癒やしてくれて――。


「……」

「アリス、そんな目で見るなよ」

「変態……」


 酷い言い草だが、決して俺が彼女に手を出したわけじゃない。


 事の発端は朝、俺の部屋に遊びに来たアリスが色々と目撃してしまったことにある。

 朝なので行為はすべて終わった後だったが、まあ全員裸だった。それだけだ。


「恋人たちと触れ合うのは当然だろ?」

「他の人がいるってことを考えてよ!」

「他の人?」


 わざとらしく首を傾げてみる。

 

「そもそも俺は、アリスを他人と思ってないぞ」

「え、えぇ? いや国も違うし……そりゃあ私も友達とは思ってるけど」

「いや、いずれ恋人になるかな女の子だと思ってる」

「気が早いよ! あ、今のは違うくて……」


 気が早いだけならあともうちょっとか。

 などと朝からアリスと遊んでいると、ミリーが近づいてきた。


「……いっそ、もう直接誘ってみてはいかがです?」

「行けると思うか?」

「今日だってがっつり見てましたし、興味はありそうです」

「な、なに言ってるのさ! き、興味とかないし! というかそんな話を本人の目の前でしないでよ!」


 なるほど……俺は身体から始まる関係というのはあまり好きじゃないんだが……。


「じゃあ試してみるか」

「試さないって! え、いや、冗談だよね? ね⁉」


 ここで本気で否定してくれたら冗談で済むのだが……。


 正直アリスも本気で恋人にしたい。

 他の恋人とは異なるこの友達という感覚は、得がたいものだ。

 だからこその背徳感というか……。


 などと思うが、さすがにそれは駄目か。


「冗談だ」

「間が長かったけどなに考えてたのかな?」

「気にするな。ああ、今日はこのままみんなで過ごすけど、アリスはどうする?」

「……なにするの?」

「昨日の続き」

「うぐ……」


 聞くんじゃなかった、という顔をしているが、結果は変わらないぞ。

 そろそろみんな回復する頃だろうし、事前に今日は一日中そういう日にすると決めていたので予定を変える気はないんだから。


 とはいえ、そうなるとアリスが一人になってしまう。

 カルラ姉さんや使用人達はいるが、気心の知れた相手はいた方がいいよな……。


「ミリー、今日はアリスについてやってくれ」

「え、それは悪いよ!」

「かしこまりました」


 いちおう対外的にミリーは恋人ではなく使用人。

 やっていることはがっつりやっているが、お互いそこの線引きはちゃんと出来ている。


 まあ嫌だと言ったらやらないが、ミリーの場合むしろ俺を誘ってきやがるからな。

 今日の分はまた後日、なにかのタイミングで返せばいいだろう。


「それじゃあ行きましょうかアリス様。せっかくですから船内をご案内します」

「ミリーはいいの?」

「はい、アリス様も大切な方ですから」


 同じ国の下級貴族と最上級貴族。

 本来なら友人関係になれない立場だが、アリスは気にせずミリーを友人扱いする。


 それはミリーにとっても嬉しいことであり、だからこそアリスのことが尊敬している。

 同時にアリスにとっても、ミリーを対等に扱うことで自分の本当の立ち位置を認識するための儀式なのかもしれない。


「アリス……もしお前が本当に悩んでるなら、まずはミリーに相談するといい」

「え?」

「それで、それでもまだ悩むなら俺がその悩みを吹き飛ばしてやるから、一緒に来たら良い」

「……もしかしてクロード君、私のこと知って――」

「聞かない限り知らない。ただそうだな……アリスが何者でも、俺にとっては友人で恋人にしたい女の子なだけだ」

 

 それだけ言うと、俺は自分の部屋に戻っていく。

 これ以上外にいるとカルラ姉さんに見つかって羽目を外しすぎてる説教を受けるからな。




「おいレオナ……お前なにやってる?」


 部屋に入ると、すでに女性陣はみんな起きていたが、なぜかレオナがハーレムを作るような体勢を取っていた。

 

「王族なら一度はこういうことしないといけないと思わない?」

「思わないし、シンシアたちにそういうことをしていいのは俺だけだ」


 特注で作ったベッドは俺がそういうことをしようと思って用意したのに、こいつめ……。

 お仕置きとしてレオナを放置して、他の子たちを愛し続ける。


「ちょっとクロード、私も……」

「……」

「あ、う……ご、ごめんなさい!」


 謝ってくるが、反省しないのが彼女である。

 というわけでもうしばらく放置して次はセリカに手を出した。


「レオナ殿……こういうときはですね」


 シンシアとセリカを同時に抱いていると、なぜかオウカがレオナに近づいて耳打ち。

 なにを言われたのか、レオナが珍しく驚いた顔をした。


 そしてまず見本を見せるように、オウカがベッドから降りると、裸のまま土下座し――。


「旦那様……某をもっと愛してください」

「あっ⁉ クロード、また大きく⁉」


 以前も感じたが、この光景と行動はあまりにも俺の支配欲を刺激してくる。

 抱っこするように抱いていたセリカが凄い声を上げ始めているが、俺の視線は裸のオウカに注がれてしまう。


「ほら、レオナ殿も」

「え、ええ……その、クロード……お願いします。私も……抱いてください」

「こ、これ、これいつもよりすご……ぁ⁉」


 その隣にはレオナが同じように並び、土下座をする。


 美少女が二人、ベッドの下で俺に向かって土下座で懇願する姿は、背徳感が凄まじい。

 背後には鏡があり、彼女たちの後ろ姿がはっきりと映っていて、直で見るよりも興奮度がヤバかった。


「くろーどぉ……」

「セリカは少し休んでていいよ」

「……うん」


 気絶してしまったセリカを優しくベッドに寝かし、俺は土下座のままのレオナを顎を持ち上げて顔を見る。

 

 潤んだ瞳はもう早く許してくれと言いたげだ。


「オウカ、二人でレオナを抱くぞ」

「旦那様がお望みとあれば」

「え?」


 二人がかりでレオナをベッドに連れて行き、そのまま望み通り気絶するまで抱きまくる。


 その後体力の多いオウカとの戦いは中々大変だったが、それも勝利し少し休もうとすると……。


「私ももっと……」

「シンシア……喜んで!」


 そのまま愛しい彼女を抱き寄せて、本日二回戦を開始する。

 ちなみに、扉が少し空いていて、二人分の気配があることには気付かないふりをし続けた。

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