第41話 レオニダス領、最後の日

 セリカの実家であるレオニダス伯爵家では中々有意義な日々を過ごせている。


 彼女の家族に認められたので、これからは正式に婚約者を名乗ることが出来るし、立場や環境が自分を変えるからか、セリカの俺に尽くす夜の動きが今まで以上に凄い。

 

 それに触発されて他のみんなも甘えてくるので、俺はこの世の春を謳歌していた。




 今日はレオニダス家が主催する闘技大会があるらしく、俺たちはみんなで応援に来ていた。

 誰の、といえばカルラ姉さんとオウカだ。


 二人は大会に出場して、予選を戦っていた。


「ウチの戦士たちをあんな簡単に……」

「改めて、クロード君はよくブルーローズ先生に勝てたよね……」


 俺たちの中でも実力の高い二人、セリカとシンシアが予選を見てそんな声を上げる。


 カルラ姉さんは旅の護衛として付いてきてくれているが、実際は引率役。

 だが俺が全然言うこと聞かずに羽目を外しまくってるからストレスが溜まっていたらしく、出てくる実力者たちをなぎ払っていた。


 予選とはいえ出てくる相手は猛者ばかり。

 今のところ鬼神化はせずに戦っているオウカも苦戦をしている。


 どういってもまだ学生だからな。

 とはいえ戦いは俺が教えてるし、彼女の才能は本物だからあと一年もしたら余裕を持って倒せるようになるだろう。


 今は……ギリギリ突破出来るくらいだな。


「やった! オウカ様も突破しましたよご主人様!」

「すごいすごい! 私じゃ無理だー!」


 ミリーとアリスが手を繋いではしゃいでいる。

 仲良しで良いことだ。

 最近一緒になって覗き見してる二人だから、より一層仲も深まってる気がする。


 ――今度、ミリーとしているところを覗き見させてやるか……。


 我ながらゲスなことを考えてしまったが、ミリーからの報告だと覗き見しながら慰めてるらしいし、そろそろアリスも我慢の限界だと思うんだよな。


 そういう風に誘導したのは俺だから、ちょっと罪悪感が……。


「別に良いんじゃない」

「レオナ、俺の心を読むなよ」

「読まなくても分かるわよ。だって私は貴方の妻なんですから」


 まだ結婚してないから婚約者の立場だが、まあいいか。

 

「……ミリー、今日の夜……いやまて」


 今日は不味い気がする。

 なにせ眼下には予選を突破して、実力者相手に善戦しているオウカがいるからだ。


 頑張ってる嫁にはちゃんとご褒美を上げないと駄目だからな。


「明日の夜、一人で俺の部屋に来い」

「え、それって……」

「最近ずっと構ってやれなかったからな。この旅行計画も良い感じだし、久しぶりに可愛がってやる」

「わかりました……ついに、なんですね」

「ああ」


 ミリーではなく、隣でアリスが驚いた顔をしている。

 わざわざ彼女がいる前で言った理由は、まあそういうことだ。


 この辺りは従者も板に付いてきたミリーは理解し、納得してくれる。


 要するにさっきの計画、ミリーとの情事を覗かせてそのまま連れ込む計画の実施だ。


 我ながら本当に最低だなこれ……。




 その日の夜――。


「ああ! 旦那様! だんなさまぁ!」

「昼はセリカの兄に負けて、夜は俺に負けるなんて情けないぞオウカー!」

「もっとくだされ! もっと、もっと!」

「強くなれるようにこれからもしっかり愛してやるからなー!」


 オウカとの夜のスパルタを楽しみ、そしてさらに翌日。


 

 明日はこのレオニダス領を経つ日なので、最後はみんなで観光をする。


 水の都リンディウムのように観光地というような街ではないのだが、古くから戦いの歴史を感じさせる無骨な街が俺は結構好きだった。


 カルラ姉さんも昨日散々戦ってストレス解消になったのか、今日は肌の艶が良い気がする。

 この人もこういう街が好きだから、気分も良さそうだ。


 アリスはもう夜のことを考えているのか、少し顔が赤かった。

 これまで散々見せつけてきたが、彼女にとってミリーは俺の嫁達の中でも特別だ。


 そんな友人とも言える相手のそれを初めて見ることになり……。


「よく考えたら、見る前提ってのも変な話だけど……」


 とにかく本人より緊張していた。


 シンシアや昨日散々動いたオウカを見ると、彼女たちも街の雰囲気に興味があるらしく、女子トーク(物理系)を話している。

 レオナも王族として、色々と見るべきところがあるのだろう。


 なんというか、全体的に武闘派だから会話の内容に華がないけど、仕方ないか。


「セリカ、久しぶりの帰省は楽しかった?」

「うん。兄たちは相変わらずだったが、その……クロードともっと深く繋がれたし……」


 また可愛いこと言ってくれる。

 思わず公衆の面前だが抱きしめてしまった。


「ちょ、恥ずかしい!」

「俺は恥ずかしくない」

「も、もぉ……」


 ちょっと怒った雰囲気出すが、振りほどこうとはしないのでいいということだろう。

 この小さな身体は抱きしめると丁度良い感じにフィットするのだ。


「……それで、明日からどこに向かうんだ?」

「飛竜に乗って、東方の国ジパングだな。オウカの実家に行くから」

「そっか……私みたいに認めて貰えると良いな」

「認めさせるさ」


 俺にとってそれはもう決まっていることなので、絶対だ。

 ただまあ、今回みたいなのはもう勘弁して欲しいかな。


 戦いとかよりも、女の子とイチャイチャしたいだけだからさ。

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