第46話 着物の美女たち
オウカに案内されて女性陣が着替えた部屋に行くと、彼女たちはみんなすでに着替え終えた後だった。
カルラ姉さんは黒髪だから紺色の着物が和風美人という感じだし、レオナとセリカはそれぞれ色味の少し違う赤い着物を着ていて金髪と良く映える。
シンシアの銀髪と蒼色の着物も、アリスの赤髪とピンクっぽいバランスも合っていて、本当に華やかだ。
京都などで着物を着た美人の外国人は目で追ってしまうものだが、そんなもの目では無いくらい似合っていた。
「みんなよく似合ってて良いな」
一人一人に声かけていくと、それぞれ性格に合った反応をしてくれる。
これはまた夜が楽しみになってきたぞ。
いや、でも夜の前に温泉があるって言ってたし着替えちゃうか?
まあそのときはまた改めて……。
「旦那様、こちらで宴を開かせて頂きますので」
「ああ、わかった」
案内された大広間に行くと、すでに食事は用意されていた。
観光は明日からということで、今日はゆっくりともてなしてくれるらしい。
……あれが、オウカの家族か。
基本的にこの世界の貴族は子どもを多く作るため、一夫多妻制で家族が多い。
セリカの実家でも兄たちが襲いかかってきたが、実はあと三十人くらい血の繋がった兄たちがいるらしい。
オウカの話だとこの実家にいるのは五人だけで全員いるみたいだが、彼女の家族だけあって強そうだ。
特に上座に座る、髭を生やして髪を後ろで括った男性は、この部屋で待っていた人たちの中でも相当……。
「どうぞこちらへ」
オウカが先に入り、そしてそれぞれ木で出来た床に敷かれた座布団に座る。
オウカの家族は黙ったまま微動だにしない。
昔の侍のような佇まいで、正座で座って目を瞑っているのに、まったく隙がなかった。
――父たちは旦那様を試そうとしています。
事前にオウカからそう聞かされていた俺は、郷に入っては郷に従えと、同じように正座をして目を閉じる。
そして一人自分自身の心を見つめるように集中していると、突然殺気をぶつけられた。
「……」
「我らの殺気にわずかな揺らぎすらないか……我が娘が選ぶだけのことはある」
「師が良かったもので」
「ふむ……音に聞こえたブルーローズか……一度剣を交えてみたいと思っていたが、まさかこんな形で出会うとはな」
どうやら認めてくれたらしく穏やかに会話をしているが、全然殺気を抑えてくれない。
俺が少しでも隙を見せようものなら斬りかかってくるぞこれは。
「旦那様、そのあたりにしておきましょうか」
「うむ……」
父親の隣に座っている、お淑やかな白髪の女性。
オウカに似ているので、彼女が母親だろう。
二人並べば姉妹と紛うほどの若々しさがあり、それでいてオウカにはまだない大人の女性らしさを兼ね備えている。
髪こそ白いが、大和撫子というに相応しい佇まい、なんだが……。
「……あの、そう言うなら不意打ちは止めて貰えませんか?」
「あら、これにも気付けるなんて、本当に優秀なんですね。ふふふ、これは孫がとても楽しみだわ」
この部屋に入ったとき、五人の兄弟と両親の七人がいた。
その中で、一番自然体だったのがオウカの母親だが、俺でもギリギリまで気付けないほどの殺気をいきなりぶつけてきた。
恐らくイガラシ家の中では彼女が一番強いのだろう。
さすがはオウカの母親である。
「さて、客人には失礼したな。だがこの男は我が娘を奪いに来たというのだから、これくらいの歓迎は許してくれ」
「大丈夫よ。それより貴方たち、私のところに来ないかしら? 待遇は今より良くすることを約束するわ」
「ははは、さすがはオルガン王国の姫ですな。だが貴殿の父より、勧誘してくると思うが絶対に受けるなと手紙を頂いているので、それは出来かねますな!」
「あら、貴方たちと私の夫、それにもっと戦力を集めたらきっとお父様も倒せて王位も簒奪出来るのに」
「俺は絶対いやですからね」
冗談に言ってるように見せかけて、俺が本気でやるって言ったらガチでメンバーを揃える気だからなこの姫様。
ただ実際、やろうと思えば俺とチャンスはあるかもしれない。
セリカの実家とオウカの実家の力があれば父上含む王国の最大戦力たちの足止めは出来るし、レオナが居れば王国を今燻っている貴族達を煽って内部分裂させることも出来るだろう。
あとはソルト王は俺とカルラ姉さんの二人がかりで……。
「ねえクロード……今、ちょっと想像した?」
「してないしてない」
隣に座っているレオナが耳打ちして誘ってくるが、それは夜の誘いだけで十分だ。
「さて、それでは今度こそ乾杯しようか。我がイガラシ家と、リンテンス家……いや婿殿の未来を祝って……」
「かんぱーい!」
最初こそ殺気に襲われた宴会だったが、始まってしまえば明るく穏やかなものだ。
特に日本風の食事や風景、それに日本では経験したことのないが、芸者さんたちが色んな遊びを教えてくれた。
オウカの父曰く、ちょっとした火遊びもしていいらしいが……俺には可愛い嫁さんたちがいるからな。
そういうのは丁寧にお断りしておいた。
誰でも良いわけではないのだよ。
俺にとって一生傍に居て欲しいと思う子以外とはやらないののだ。
「しかし日本酒、上手いな……」
前世ではビールが中心で、この世界に来てからもワインなどが多かったので日本酒は本当に久しぶりだ。
この世界では白銀酒と呼ばれているらしいが、黄金の国ジパングは日本をモチーフにしているので日本酒みたいなものだろう。
「だんなさまぁ……どうですかこちらはぁ……」
「オウカ、なんか酔ってない?」
「よってませぬぅ……」
いやこれ、酔ってるやつじゃん。
なんかいつもと雰囲気違っていて、夜とも違う感じで可愛いけどさ。
ゴロゴロと喉を鳴らす猫のようで、顔に触れたりとつい両親や兄弟の前で甘やかしてしまう。
「これは孫も早そうだ」
「ええ、男児でも女児でも可愛い子になりそうですねぇ」
もっともこの両親、かなり積極的なので問題なさそうだし、兄弟たちもうんうんと頷いて問題なさそうだ。
オウカって酒に弱かったのか?
普通に学園とかでも飲んでた気がするけど……。
そう思って周囲を見ると、他のみんなも顔を少し赤くして目がとろんとしていた。
「しかし婿殿は酒も強いな。白銀酒は慣れないと酔いが回りやすく、オウカも体質的にほとんど飲めないのだが」
「そうなんですか? 飲みやすいし懐かしい感じもして、丁度良かったですけど」
「ははは。それじゃあお前、女性たちを部屋に案内して差し上げなさい」
「はい。それでは皆さん、こちらへ」
女性達は宴会場から出て行き、俺はそのまま父親たちと日本酒の肴にと、学園での出来事を彼らに話していく。
他にもこのジパングについても色々と話して貰うと、やっぱり天然温泉なども多くあるらしい。
明日以降にでも、と勧められたので絶対に行きたい場所だ。
「それじゃあ俺もそろそろ休みますね」
「うむ。楽しい夜だったぞ」
「こちらこそ」
久しぶりに日本っぽい世界の話が出来て本当に楽しかった。
俺も卒業したら領地を継がないといけないけど、定期的に遊びに来たい場所だ。
そうして部屋に戻ると、布団の上で少し乱れた着物でこちらを待っていた婚約者たち。
すでに酒は抜けているようだが、その瞳は完全に俺を誘っているもので……。
――昨日たくさんヤッただろう? それで体力失ってやつれてたじゃん朝。そろそろ休もうよ。
俺の頭の中の天使がそう言うが、それはそれ、これはこれ。
この状況で退くような教育は受けてないのである。
というわけで、昨夜に引き続きとても良き夜でした。
みんなの乱れた着物、最高にエロかったです。
明日の温泉も楽しみだ。
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