謎部

       ※ ※ ※ ※ ※


 ほう、と原広明は部活立ち上げの申請用紙を机の上に置いた。広い職員室を冷やすためにかなり低い設定温度にされた風に、薄い紙が揺れる。

 原は小川と伏見の担任で英語教師だ。三十二歳と若いこともあり、男子生徒たちからは兄貴分として、一部の女子生徒からは憧れの年上の男性として親しまれている。

「なるほど、なるほど。そうきましたか」

 顎をなでる原に小川は言う。

「どうでしょう、先生」

 ポンと原は膝を叩いた。

「こいつと」

 まず原は伏見を見る。

「二人で」

 今度は小川に顔を向けた。

「部活をやる、と。どういう風の吹き回しだ」

 にやにやしながら原は小川たちに訊ねてきた。

「今更ですけれど、青春しようかと思いましてね」

 笑顔をつくって小川は答えた。

「結構じゃありませんか。ぜひ、ぜひやってくださいよ」

「ま、せっかく高校に入ったんですから。どうせなら、ね」

 な、と小川は伏見を見た。笑いをこらえている様子の伏見に小川は軽い怒りを覚えた。だが、今は二人でもめている場合ではない。

「それはいいんだけどね、伏見くぅん」

 原は伏見を指さした。

「謎部ってなに?」

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