「じゃあな、超能力少女」

 去ろうとした伏見の肩を倉坂がつかんだ。

「痛ぇな」

「どうやって鍵を開けたか、まだ答えを聞いてない」

 ちらりと伏見から視線を送られて、小川は制服のズボンのポケットから鍵を取り出した。

「やるよ」

 小川は変色した鍵を投げた。

「この汚い鍵で開けたの?」

 伏見は床に落ちた鍵にむかって顎を突き出した。

「部室棟の掃除用具ロッカーの中で見つけた。どこかの鍵なんだろうと思って、片っ端から部室のドアにさして回るか試してみた。当たりだったのが」

 にっと笑うと伏見は演劇部室の扉を指差した。

「馬鹿じゃないの。警察呼ぼうか」

「そいつは勘弁してくれ」と小川は手のひらをあわせる。

「でもなんでうちの部室のキーが二つも。それにロッカーの中なんかに」

 倉坂は首を傾げる。

「たぶん誰かがスペアキーをつくったんだよ。部室の鍵は事務室が開いている時間なら持ち出せる。不心得な演劇部の先輩が学校の外に持ち出して、鍵屋に持っていったんだろうよ」

 伏見の説明を聞いても、まだ倉坂は怪訝そうな顔をしている。

「だとしても、なんでそれがロッカーの中に?」

「知るかよ。卒業するときに合鍵を処分するのが面倒で放り込んだのかもしれないし、なにか別の理由があるかもしれない。想像するしかないさ」

 つまらなそうに言うと伏見は床の鍵を蹴った。

「ま、どうしても知りたければ犯人に直接、訊いてみるんだな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る