警告

「こっちからすりゃ、倉坂、お前の表情から心を推理する芸当は超能力だ」

 感心と畏怖が混ざり合ったような声で、小川は言った。

「なんか褒められた気はしないな。あ、褒めてないか」

「少なくとも、タネを明かさなければ、お前には心を読む能力があるんじゃないかと不安になったり、勘違いしたりする馬鹿はいそうだ。考えの足りない連中の前で、その特技を披露するのはやめておいたほうがいい」

 真剣な顔で語る小川を前に、倉坂は戸惑っているようだった。髪に伸ばした手を止めてぼやく。

「なんか説教されてるみたい。てか、脅されてるのほうが近いかも」

「そうだよ、これは警告だ」

 強めの口調で小川が言うと、倉坂は息を吐いた。

「ま、心当たりがないわけでもないから、一応、そうねとありがたく受け取っておく。ありがたく? ありがたくはないか」

「さては中学の頃、いじめられでもしたな」

 小川の問いを倉坂は無視した。

「今度から嘘をついているかどうか知りたい人間がいたら、倉坂の前に連れて来よう」

 伏見がからかうと倉坂はけだるそうに首を回した。

「うーん、百発百中ってわけでもないんだけどな」

「そりゃそうだ」と小川は語り出す。

「この超能力は倉坂が持っているサンプルの範囲内でしか活用できない。そもそも、人間とか感情ってのはそう簡単なものでもないしな」

「だから、超能力じゃないって。ここはそういう世界線だから@*7#$&%>」

 最後にゴニョゴニョ言ったところは、伏見にはよく聞き取れなかった。

 オウボヨウコウニモソウカイテアルシと聞こえなくもなかったが、それではなにを意味しているかわからない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る