大人が行けばよい

「だろ?」

「でも、記録が残ってるかな」

「あの鍵屋に行ったことないんだな。あそこの爺さんはノートに手書きで記録をつけている」

「だとしても、見せてくれないでしょ。個人情報なんだから」

「そこはひと芝居打てよ、演劇部」

 馬鹿にするように伏見は倉坂を指さした。

「台本があればやってあげなくもないかな」

「本気か」と伏見は顔をしかめる。

「冗談に決まってるでしょ」

「そうだな、演劇部室から衣装が盗まれた。犯人が使ったらしい合鍵が見つかった。たぶん、そちらの店でつくったんだろう。誰がつくったか知りたいとでも言えば、あの爺さんのことだ、調べてくれるかもな」

「なんで衣装なの? お金でよくない?」

「よくないな。お金なら警察沙汰になりかねない。小さなトラブルのほうが無難だ」

 倉坂はうなづいてから反論する。

「でもさ、子どもが行ってまともに話を聞いてくれるかな」

 倉坂は小川を指さした。

「大人が行けばいいんだろ、大人が」

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