楽園追放

 ガラリとドアが開いた。

 入ってきた制服姿の少女は不審な目つきで、小川と伏見を交互に見た。

「なんで小川がここにいるの?」

 不機嫌な声で女子生徒は尋ねた。

 助けを求めるように小川は伏見を見た。伏見は「俺のほうを見るなよ」という顔をした。仕方なく小川は答える。

「いや、ちょっと涼みに」

「部外者は出てって」

 少女は左手を腰にあて、右手を廊下のほうに向けた。

「ここは演劇部の部室。あんたたち、演劇部じゃないでしょ。それとも入部をご希望?」

 小川と伏見は顔を見合わせた。

「滅相もない」と二人仲良く手を振る。

「なら出てって。ほら、早く。出てけ」

 うなづきあってから、そろりと小川と伏見は廊下に出た。

「おい、煎餅の袋とコーラは持ってけ。馬鹿」

 ドアの隙間から勢いよくペットボトルが飛んできた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る