二番目の解答
「誰かが死ぬぞ。止めてみろ、というパターン」
「もいっこは?」
「こいつを送りつけた……」
小川の言葉を伏見が遮る。
「待てよ、おっさん。犯人は絞れる。これはミステリ研究会への挑戦状なんだろ? できたてほやほやのミス研への。できたことを知ってるやつは限られるよな」
「……原か」
満足そうに伏見はうなづいた。
「先生なら部室の場所も知ってる。それにミステリ好きなんだろ。だったら、トリックを使って密室状態の部室に突然、暗号書いた紙を出現させることもできる」
「その方法はわからんがな。確かに読んだ作品からトリックを拝借した可能性はありそうだ」
「善は急げだ」
歩き出した伏見の背中に小川は声をかける。
「ちょっと待て。もし原先生が本当に手紙を送りつけて寄こした犯人ならば、手土産があったほうがいい」
「サラダ油でも送ろうってか?」
「いや、解かないと死ぬんだろ。だったら、解いて、正解を届けてやったほうが面白くはないか、ふっさん」
「そらそうだけどさ、なんの謎を解けばいいんだよ。問題がわからないじゃないか」
伏見はお手上げのポーズをとった。
「すでに問題が出されているとしたら?」
伏見の眉が動く。
「わからないか、ふっさん。俺たちの周りで事件は起きているじゃないか?」
はっと伏見の顔色が変わった。
「…………猫、か」
静かに小川はうなづいた。
「待て待て待て。毒入りの餌で猫を始末してまわってるやつがいるのは事実だ。犯人を当てろ、というのが問題ならば、問題が一つある」
「問題、問題と続いてわかりにくい日本語だが、その問題とやらはなんだ?」
「あらゆるテストは出題者が正解を知っていなければ採点できないといことだ」
小川は首を傾げた。
「わからんな。それに出題サイド自身にすら正解がない問題もあるだろ。正解がある問題だけが試験になるのは、高校くらいまでだぜ。正解がないからこそ考える価値のある問題はあるし、たいがいのことは正解は一つじゃない。ふっさんはわからんかもしれないけど」
「お説教をどうも」
伏見は肩をすくめた。
「老害みてぇなこと言って悪かったよ。で、問題ってのはなんだよ」
「つまりさ、先生は答えを知ってるってことだろ、おっさん」
小川はため息を吐いた。
「そういうことか」
「なんで、原先生は正解を、猫事件の犯人を知ってるんだ?」
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