小屋に帰ろう
「あれとは?」
ほら。思わせぶりなことを言うから。秘密です。命中率があがるあれですよね。確かにリリアンヌ様は致命的なノーコンが改善されれば強いですけど。
「あのね、呪文で大きくなって、どーんってユーリおねえちゃんがばーんってやるとすごいのよ」
へ?
「そうなんだ。すげー武器なんだ」
泡立て鬼、そっちの話なの?
「おや、ユーリさんはこう見えてよほど腕の立つ方だったのですね」
セバスティアンさんが私を見た。
「ぜ、全然です!冒険者見習いで、レベルもこの間やっと4になったくらいで」
ん?まって、本当に4だったかしら?
見るのが怖い。……また、あの、何もしている自覚がないのに、ドラゴンタートの卵を泡立て鬼で倒したというか破壊したあれが経験値として加算されてレベルが上がっているなんてことは……。
最弱のレベル10までまっしぐらになっているなんてことは……。
ぶるぶると震える。
「おお、そうでしたね。冒険者見習いでしたね。ポーション畑の小屋に住まわれているのでしたか?」
「うん。キリカとカーツお兄ちゃんとユーリお姉ちゃんの3人で住んでるのよ。ブライスお兄ちゃんはこの間レベルが10になって冒険者になったの!」
セバスティアンさんが好々爺的な笑顔になった。
「冒険者の卵に、新人冒険者ですか。引退しましたが私は冒険者をしておりましてな」
はい。リリアンヌ様に聞きました。
元S級冒険者なんですよね。
「多少は経験もありますし、僭越ながら冒険者として困ったことがあれば相談に乗りますぞ」
多少の経験じゃないよね。元S級冒険者……。というか今も強そうです。
まさか、最弱の冒険者候補の私とは真逆。最強の元冒険者なのでは……。
泣いていいですか。
「セバスティアン、すごいのよ。このブライス君。魔力が高いの。きっとすごい冒険者になるわ!」
「ほほー」
そこでセバスティアンさんがぽんと手を打った。
「このような場所で立ち話もあれですし、小屋まで移動いたしましょうか。そこにリリアンヌ様の捜索隊の臨時テントもありますから。馬車も馬もそこまで移動すれば手にはいります」
捜索隊。そっか。
「ここ、もしかしてさらわれた場所ですか?そこに戻ってきたんですね」
なるほど。
「小屋に戻れるんだな!あっちか?早く行こうぜ!」
カーツ君が嬉しそうな顔をして駆けだした。
「カーツお兄ちゃん待って!」
キリカちゃんがそのあとを追いかけて走り出した。
「小屋に行ってみたかったの!キリカちゃんカーツくん案内よろしくお願いしますわ!」
その後ろをリリアンヌ様が追いかけて行った。
「行きましょうか、ユーリさん」
ブライス君が私を見る。
「えーっと、馬を連れてこちらに戻ればいいですか?」
セバスティアンさん一人で荷物番になるのかな?と振り返ると。
「心配には及びません」
セ、セバスティアンさん?!
「さぁ、行きましょうか」
大きな、荷物満載の馬車を、セバスティアンさんは軽々と持ち上げてすたすたと歩きだした。
す、すごい……。
元S級冒険者……強すぎる……。
私なんて、小屋まで歩き切る体力の心配をしなくてはいけないくらいなのに。
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更新ペースがまったりでごめんなさい。
ご覧いただきありがとうございます!
(*´▽`*)
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