よっぱらい
「あちらで休ませよう。ミギル、運んでやれ」
近くにある建物をシャーグが指さした。
ミギルさんが頷き、ブライス君を抱き上げた。お姫様抱っこだ。
と、思ったら、また目を開いてブライス君がミギルさんの手から逃れた。
「僕とユーリさんを引き離そうとするなら容赦しません」
ブライス君が私を背にして、右手を突き出した。
「氷矢」
ブライス君の前に、氷の矢が20本ほど現れ、近づく者をけん制する。
「ブ、ブライス君、だめ。誰も私とブライス君を引き離そうとはしてないからね?」
慌ててブライス君の手を握る。
「大丈夫だから。ここにいるから。矢は消して、ね?彼らは敵じゃないよ」
ブライス君が私を見た。
「ユーリさん……僕のそばにいてくれるんですか?」
「うん。ブライス君、ずっと私たちのこと心配してくれてたんだよね。やっとあえて安心して、それで酔っぱらったらまた不安になってる?」
日本の子供たちもそうだったな。
目が覚めて近くにいないとどこかへ行っちゃうんじゃないかって不安になっているときは、ずっと手を握っていたっけ。
普段子供っぽいところを見せない……いや、28歳で子供じゃないにしても、大人だって時々は子供みたいになるし、……ローファスさんはいつも子供みたいなところがあるけど。
とにかく、いつもしっかりしているブライス君が、酔ったことで子供みたいな我儘を言うの。新鮮。
って、ちょっと待って。エルフの血のせいでは成長が遅いっていうけどそれは肉体的なことだけなのかな?
もしかして精神の成長も遅くて、28歳だけど見た目は中学生みたいなんじゃなくて、28年生きてるけど、見た目も精神も中学生ってことは?
あり得るよね。つい、見た目は子供頭脳は大人って感じかと思い込んでたけど……。
「僕は酔ってないですよ」
と、言うことは酔ってるね。
「ユーリさん、僕のそばにいてくれるんですか?」
「大丈夫。私はここで料理してるからね?ブライス君も移動したくなければここで休んでて」
ブライス君が、私の右手を両手でムニムニとしている。
それから、私の手をそっと口元に持って行った。
「ユーリさんと僕を引き離す人間がいたら、滅ぼしてやる……。魔力増強石でもなんでも使って……僕のユーリさんだ……僕の……」
手が口元にあるので、何を言っているのか声がこもって聞き取れない。
うーん。まぁ、たとえ何を言っていても、酔っ払いのたわごとなので。
……問題は、魔力に酔ったのか、チョコレートに酔ったのかどちらかってことだよね?
キリカちゃんは鰹節で獣化したよね。
ブライス君はエルフの血が流れているといったから、人とは違う何かが起きる可能性がある。
チョコレートで酔っぱらうということだって、十分考えられる。……そもそも、ステータスの何に効果があるのかは謎のままなのだし。
ポンッ、ポンッ、ポポポンッ。
「きゃぁ!」
「なんだ?何の音だ?」
突然の小さな破裂音に、緊張が走る。
========
ブライス君の暴走(*´ω`*)によによ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます