ダイーズ+ブライス
「第三問」
おっと、人のことを気にしている場合ではない。
「では最後の問題です。第十問」
よかった。
冒険者としてダンジョンルールなんて習ったことなかったけど、問題はどれも簡単だった。
人として当たり前の行為を選べばいいんだから。
お姉さんが紙を回収して採点。
「はい、では用紙を返しますね。まずはブライス君」
名前を呼ばれて立ち上がったのは、顔が綺麗な子だった。
君ってことは、男の子だったんだ。少しがっかり。
「満点です。ダンジョンルールの基本はすべて分かっているようなので、初級ダンジョン基礎講習の知識編体術編を受ければ問題ないでしょう」
満点!
「次です」
次に呼ばれたのは女の子。1問だけ間違えていたらしい。
「はい、次は、おしゃべりする余裕があった割には、ずいぶん残念な結果ですね?初級ダンジョン基礎講習を受ける前に、ダンジョンルール基礎と応用も受けてもらいます」
男の子ふたりは赤点だったようだ。
「それから、最後にダイーズ君」
「え?」
名前を呼ばれたとき、前に座っていたブライス君が振り返った。
ん?
「はい、どうぞ」
渡された答案用紙は、×ばかり。
あ、あれ?
「0点です」
う、そ、だよね?
ショックで青ざめる。
何故?どうして?
「人としては優しくて満点の回答ですよ」
お姉さんがにこっと微笑んでくれた。受付で見た怖い笑顔じゃない、本当に優しい笑顔だ。
「ですが、ダンジョンルールは何も知らないというのがよくわかる結果です。これからしっかり学んでいきましょう。ダンジョンルール基礎を2回、応用を3回受講してください。講習は今日と明日あります。頑張れば、明日の午前には終わるでしょう。すべての講習を受けて皆さんも晴れてF級冒険者となれるよう期待していますよ」
お姉さんが部屋を出て行った。
「0点だって、お前、バカなのか?」
男の子の一人がからかうような目を向ける。
ガタンと大きな音を立ててブライス君が立ち上がった。
迷惑だよね。ごめんねと思っていたら、ブライス君がすごい笑顔で、こちらを見る。
そう、受付のお姉さんが見せたあの、怖い笑顔の10倍くらい怖い顔。
ご、ごめんなさい。0点取るような人間がうるさくしてごめんなさい。あ、うるさいのは絡んできた子たちなんだけど、原因は僕にもありますよね……。弱い上に何も知らないなんて……。僕には冒険者は無理だろうか。
「人としては優しくて満点……と、先生はおっしゃっていましたね」
はい。でも冒険者としては0点だそうです。
「僕の知っている人に、同じ人がいます。とても優しくて素敵な女性です」
あ、少しだけブライス君の表情が柔らかくなる。
きっと本当に素敵な女性なんだろうなぁ。
「ですが、ダンジョンルールは何も知りませんでしたし、ダンジョンルールを知って悲しんだり、怒ったりしていました。ですが、ちゃんとその理由まで理解すれば、必要なことだとよく心に刻むようになりました。そのうえでもなお……人として優しい人です」
ブライス君が男の子に顔を向ける。
「君たちは、冒険者として満点も取れない、人としても満点を取れない、どちらも中途半端な人間でしょう?ああ、もしかして、人として問題があったからこそ、ダンジョンルールで運よく正解したのかもしれませんね。助けてと言われても、助けなさそうですから」
「なっ、何を!」
ブライス君の言葉に、男の子の一人が激高する。
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ブライス君が出てきたよー。
えーっと、あと数話ダイーズ君です。ユーリさんとその後合流します。
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