ダイーズ+友達

「ダンジョンルール。ダンジョン内での喧嘩はご法度よ。ギルド内でもダンジョンルールは適用されるわ。私は目撃者として、あなた方が喧嘩したと証言しても構いませんわよ?ああ、もちろん、証言内容はあなた方2人が一方的に絡み、彼がそれを助けようと手を差し伸べたということで間違いありませんわよね?もちろんその場合の処罰は、絡んだ人間に謹慎か罰金か、重い場合はランク降格」

 女の子が淡々と話を進める。

「あら?でもまだ仮のF級の場合は、降格だとどうなるのかしら?レベルが10でも冒険者見習いなのかしらね?」

 男の子が慌てる。

「け、喧嘩なんてしてねぇ、お、俺たちはなぁ、その、」

 あ!

「もしかして、僕、村から出てきてこの町には一人も知り合いがいなかったから……友達になろうとして声をかけてくれたのかな?」

 と口を開いたら、無表情だった女の子の表情が驚きの表情を浮かべた。

「は?」

「いたよ。村でもさ。その、素直に慣れなくて、つい悪口バッカリ言っちゃう人。口は悪いけど、悪い人じゃないんだよ。森で足をくじいて歩けなくなった時にも、馬鹿だなって。こんな何もない森で足をくじくなんて赤ちゃんくらいなものだ、だからお前はろくな獲物も取れない。って散々言われたけど、それでも背負って村まで連れて行ってくれたんだ」

 思い出して思わず笑顔になる。

「ば、ばっかじゃねーの。本当に、馬鹿だ!と、友達になんて、ならないからな!」

 男の子二人が背を向けた。

「え、そ、そっか……」

 友達にはなってくれないのか。

 しゅんっと頭を下げる。

「ぷっ。ふふふふっ。人としては満点というのはさすがね……だけれど、ふふふ。私で良ければ友達になりましょう!」

 女の子が手を差し伸べてくれる。

「え?あ、本当に?有難う。あの、僕はダイーズと言います!よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げて、女の子の手を握る。

「ふふふ、名前は知っているわ。さっき先生に呼ばれていたでしょう?私はランカよ。そちらはブライス君よね。あなたはどうします?」

 嬉しい。友達だ!

 ブライス君にランカさんがどうすると尋ねているけれど、何のことだろう?

「そうですね、僕も友達に加えてもらえますか?」

 ブライス君が両手を出した。

 片手をランカさんが、もう片方の手を僕が握る。

「あ、有難う!あの、友達、嬉しいです!その、僕の村では、子供が少なかったから、あの、本当に嬉しいです!」

 と握手をしていると、ドアが開いて、腕や顔に傷がある2mはあろうかと言う大きな男の人が現れた。

「ダンジョンルールのテストは終わったなぁ。次に実技テストだ。実力を確かめてやる。基本もできてなきゃダンジョン行きはお預けだからな。実技講習受けてもらうことになる。訓練所に移動するぞ」

 実技テスト!

 どうしよう。

 心臓がバクバクなりだした。「お前は弱い」「強くなったつもりか、弱いことを自覚しろ」「ほら見たことか全く奴に歯が立たないだろう弱虫が」「ワシがおらねば死んでいたぞ弱虫」「弱すぎて話にならん」

 お爺さんにさんざん言われた言葉だ。

 訓練所はギルドの建物の裏側にあった。周りを高い石造りの壁に囲まれ、的がいくつか立ち並んでいる。反対の壁には、太い木の柱が何本か並んでいて、繰り返し叩いたためかえぐれている。

 また別の壁際には壊れた的や折れた柱などが置かれていた。

「まずは、誰からやる?」

 男の言葉に、男の子の一人が手を挙げた。

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