さようなら~

 動きをとめたら、ブライス君がスプーンを持つ私の手を取り、自分の口にスプーンを運んだ。

 とっても幸せそうな顔をして、ほほを染めるブライス君。

 美味しい物を食べた顔だ。

「キリカも、その料理したの食べたいのよ」

 ああ、そうね。塩水で洗ったウニが食べてみたいのね。

 スプーンですくってキリカちゃんに差し出すと、キリカちゃんもパクリ。

 それをうらやましそうに見てるリリアンヌ様……。

 えーっと。お貴族様ですよね?

 流石に、失礼なのでは……。

 うずうずした顔で見られても……。

 スプーンにすくってからスプーンを手渡そうと差し出すと、スプーンを受け取らずにリリアンヌ様がパクり。

 カーツ君が見てるので、カーツ君にもスプーンですくって口に運んであげる。

 その様子を見ていたブライス君が。

「ユーリさん」

 目をつむって口を開いて待っている。

「はいどうぞ」

 ブライス君の口にもう一度運ぶ。

 その後ろで、解凍されたシャーグが同じように目をつむって口を開いて待っていた。

 いや、いや、ナニコレ!

 食べられないよ、ウニ!自分の口に入らないからっ!

 と、思ったら。

 ブライス君がスプーンですくって私の口に運んでくれた。

 躊躇なくパクン。

 はぁうーん!

「あっまぁい。とろんとろん。クリーミーでおいしい。これが、とれたてウニの味……なんておいしい」

 幸せいっぱいで、うっとりすると、ブライス君が赤くなって顔をそらした。

「その顔は反則です……」

 何か言った?

 ブライス君がはぁーーーと長い溜息をついてから、立ち上がった。

「すいません、僕……何か正気を失っていたみたいで……」

 ん?戻った?

「酔っていたみたいだけど、元に戻ったならよかった。どこか体調に変化はない?痛かったり気持ち悪かったり」

 ブライス君がばつの悪そうな顔をする。

「平気です……みっともない姿を見せてしまって」

 ううんと首を横にふる。

「みっともなくなんかないよ?いっぱい心配してくれたんだなってわかって嬉しかった。本当にありがとう。こうして飛んできてくれたのも嬉しい。でも、無理しないでね。ブライス君が私のことを思ってくれるように、私もブライス君のことが大切だから」

 ブライス君が手で顔を覆ってしまった。

「わ、分かってます。キリカやカーツと同じように……ですよね……。ああ、もう。ユーリさん……」

 ブライス君が顔から手をはずして私を見た。

「僕が成長したら、覚悟してくださいね。子供扱いは二度とさせない」

 ん?

 子供扱い?……あ。

 28歳の精神年齢だったとしたらプライド傷つけたかもしれないし、14歳の精神年齢だったとしたら思春期で子供扱いされたくないか。どっちにしても私が悪い。同じように子供っぽいことしても、見た目が大人だったらもっと違う対応してたよね。ローファスさんとか……。

 ブライス君は大人。大人だと思って接していかないと……。反省。

「転移装置の魔力を溜める装置はどこですか?」

 ブライス君がミギルさんに尋ねた。

「案内しよう」

「ちょっと協力してきます」

 ブライス君がミギルさんと一緒に棟に向かった。

 それから数分後に戻ってきたブライス君の言葉に、皆が衝撃を受けた。

「あと半時間もあれば転移できるって」


 ハズレポーションとカカオ豆を詰めるだけ馬車に積み込みその隙間になんとか乗り込んだ。

「いやぁ!もっと赤の大陸にいられると思ったのに!」

 ですよね。

 リリアンヌ様の言葉に心の中で同意する。

 海産物祭りはこれからだったのに!

 でもきっと、赤の大陸じゃなくても青の大陸でも海沿いの街に行けば、海産物祭りができるはず。

 これは食べられますかの話は、帰る時間が早まったことで、慌ててその場にあるものを教えられるだけ教えた。

 とりあえず煮込んである豚骨だか牛骨だか何の骨か分からないスープにはわかめもいれるといいとか。昆布は干して保存しておくとか。御飯を炊くときに昆布入れるだけでちょっとご馳走になるとか……。ああ、私も色々食べたかった!


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