ダイーズ✖2回戦

 そういえば、神隠しの森のお爺さんも、強くて、僕を助けてくれた。目を輝かせて強さに憧れると、ブライス君がローファスさんをちらりと見た。

「単に、戦闘馬鹿でS級になる人もいますけどね」

 ローファスさんが口を尖らす。

「おいしい物が食べられない、携帯食の干し肉はもう食べたくないってS級冒険者をやめちゃう人もいるし」

 えっと……。おいしいものが食べたい?

「でも、結果としてさ、俺のがおいしいもの食べられてるよな?セバスティアンは失敗したよな」

「食べることは大切です。……それから、きっとそのセバスティアンさんという人も冒険者をやめても人を助けていると思います」

 お爺さんのことを思い出しながら口にする。

「ダイーズ、お前、やっぱりユーリの弟なんじゃないのか?なぁ?ブライスもそう思うだろ?なんかユーリが言いそうなこと言ったぞ?」

 ブライス君がはぁーとため息をついた。

「兄弟だからって同じようなこと言うとは限らないでしょう。ローファスさんとサーガさんはむしろ逆のこと言っていませんか?」

「ん?んん?そう言われれば……サーガにはよく「兄さん冗談はやめてください」って言われるな。本気で言ってるのに。あ、あと「ダメです兄さん」と止められることもあるな」

 ローファスさんが納得した。

「ま、いいや。じゃ、2回戦と行こうぜ」

 ローファスさんが立ち上がった。

「ブライス、ハンデなしでいいか?」

 ブライス君が顔をしかめる。

「何言ってるんですか、僕たち3人はまだ仮のF級冒険者ですよ?」

「……いや、だが」

「経験が圧倒的に不足しています」

 ブライス君がそういいながらローファスさんに水球を付ける。どうやら2回戦自体には賛成のようだ。

「えー、じゃあ、攻撃魔法は使わないが、身体強化はいいだろ?」

 ブライス君がローファスさんの言葉に、ゆっくりとした口調で答えた。

「重ね掛け……はなしで」

 そしてランカさんを見る。ランカさんが頷いた。

 そして、ブライス君が僕に近づいて耳打ちする。

 意図は分からないけれど何か考えがあってのことだろう。

 1回戦と同じ位置につくとすぐに2回戦開始。

「うわっ」

 驚いた。

 たしか身体強化魔法を使うと言っていたけれど。

 ローファスさんの動きが変わった。

 遅くなんかない。速い。動いているときに、水球を狙って打つなんてとても無理そうだ。体のどこか別の場所に当ててしまいそうだ。

 でも、ブライス君はそれでいいと。

 ローファスさんは1回戦の時と同じようにランカさんに向かっていく。

 ランカさんが【土障壁】を発動してローファスさんの攻撃を防いだ。

 いや、あっという間にローファスさんが土障壁を打ち砕く。

「確かに強度は大したものだが、まだまだだ」

 パラパラと崩れていく土障壁。

「なんだと!重ね掛けか!」

 崩れた土障壁の後ろにもう1枚土障壁が現れる。

 そうか、あの時ブライス君とランカさんはあのやり取りでこれを……!

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