エビとカニとウニとイクラと、へいらっしゃい
何を作ろうかな。わさびがあるんだから、まずは生で食べる?鮮度がいい物が手に入るかな?
エビもカニもウニもとりあえず焼く?焼いただけで最高においしいよね。間違いない。
昆布で出汁を取れば……美味しさが倍増する。わかめで味噌汁。あ、まだ味噌が手に入らないんだ。ハズレポーションは液体だから味噌は出ないかなぁ。ハズレ魔石は個体だからやっぱり味噌はないよね。ハズレ宝箱とかないのかなぁ。蓋を開けたら味噌が詰まっているとか。
海苔があればおにぎりがよりおいしく食べられる!海苔巻きも作れる。
ああ、そうなると、紙すきみたいに板海苔を作る手順……。
「はー、楽しみですわ。あ、そうそうカカオ豆は国と国で正式に貿易と言う形に持っていくつもりですが、海の幸となると日持ちしませんので、私が個人で買い取りますわ。代金はお金よりも小麦など現物が良ければ教えて頂戴」
え?
あ……そうか。転送魔法陣がないとやり取りできないのなら、そう勝手にいろいろな物を行き来させるわけにはいかないのか。
カカオ豆は、青の大陸で別の国との有益な取引品目……宝石のような価値のあるものになるだろうけれど。
海苔は……そうだよね。海苔だもんね。国同士で取引するような物じゃないよね。
そっか。
そっか……。
がっかり……。
リリアンヌ様にお願いして取引してもらったりとか……無理ですよね。
いくらローファスさんという共通の知り合いがいると言っても。
リリアンヌ様どう見ても貴族ですよね。いえ、見た目は関係ないですけど。
どう見ても貴族に見えないローファスさんも公爵家の人間ですし。
……貴族同士、社交界での知り合いなのかなぁ?
リリアンヌ様とローファスさんってどういう関係なんだろう。実は婚約者だったり?
……。
二人が並んだ姿を想像する。
……ふと、ローファスさんが家族になろうと言っていたことを思い出す。
ローファスさんがパパで、リリアンヌ様がママで、私が養女。家族……。
そうなれば、海苔も取り寄せてもらえ……。
ぶんぶんと頭を横に振る。
ダメダメ。なんで私がローファスさんの養子に!ほぼ同じ年で娘とか無理無理。リリアンヌ様だって、嫌だよね。いきなりこんな大きな子持ちなんて!
「シャーグ様準備が整いました」
シャーグのもとに女性が一人来て声をかけた。
「おお、そうであった!」
シャーグが立ち上がって女性から受け取った紙とペンをリリアンヌ様に差し出す。
「手紙を書いてもらおうと思っていたのだ」
シャーグの言葉にリリアンヌ様が顔をゆがめる。
「はぁ?ローファスに?まだあきらめてなかったの?」
すっとレイピアを抜き出してリリアンヌ様が紙を切り刻んだ。
「いや、違う、そうじゃない。手紙ならすぐにでも送れる。小さいし生きているのもでもないからな。まだリリアンヌ殿たちを送り届けられないが、無事なことは手紙に書いて送るといいかと……」
リリアンヌ様がぽんっと手を叩いた。
「そうね。手紙を書くわ。私は無事です。タコとエビとカニとイクラとウニと昆布とわかめと海苔を食べるまで帰りませんと」
は?
帰りません?
「ダメだよ、リリアンヌ様。帰らないと!」
カーツ君が慌てた。
「……」
リリアンヌ様が悲しそうな顔をしてカーツ君を見る。
「そ、そうよね。カーツ君もキリカちゃんもユーリちゃんも……早くお家に帰りたいわよね……」
しゅんっとするリリアンヌ様。
「ううん。俺は孤児だし、ユーリ姉ちゃんも家族いないし、キリカはいないほうがいい父親しかいなくて帰る家はないんだ。だから平気だけど」
リリアンヌ様が両手を広げて私とカーツ君を抱きしめた。
ぎゅむぅ。お、お胸が!息が!
「ごめんなさい。待つ家族がいる私が我儘を言っちゃだめよね」
「いや、そうじゃなくてさ。ローファスさんに美味しい物を俺たちだけで食べてから帰るなんて手紙書いたら」
リリアンヌ様がすんっと表情を失った。
何かを察したらしい。
「そうよね……ローファスなら……」
リリアンヌ様がポンっと手を打った。
「じゃあ、こういうのはどう?私たちは無事です。とてもいいところなので、もうちょっと遊んで帰りますっていうのは?」
リリアンヌ様……そんなにエビとかカニとかウニとかイクラとか食べたいんですか……。
でも……。
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