■閑話■(暗黒大陸や転移魔法陣などのフラグ回)
*忘れてました。閑話がありました*本編は次回から
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「あー、しまった!」
ドワーフの叫び声に、美貌のエルフは顔をしかめた。
「どうしたんだ、バン?」
無視したいと思ったが、無視したら無視したで反応を返すまで叫び続けることを長年の付き合いで知っているエルフは、仕方なくドワーフに尋ねた。
「新し武器の登録で、あのお嬢ちゃんについてきてもらうつもりだったんだ!すっかり忘れていた!戻るぞ!戻って嬢ちゃんに」
「え?戻る?また今度じゃだめですか?せっかく玄孫が王都にいるという情報をつかんだのに……遅れれば、また行き違いになってしまうかもしれません」
「うー、ワシが武器登録するのと、お前が玄孫と会うのと、どちらが大切なんだ!」
エルフが小さくため息をつく。
「私にとっては、玄孫に会うことの方が大切ですよ。バン、玄孫は移動しますが、ギルドは動きません。別に次の機会でもいいでしょう?」
ドワーフのバンが、地面を足でじくじくと蹴り始めた。
「うー、そりゃ、あの画期的な武器を嬢ちゃん以外が思いつくとは思えないが……。ああ、でも、嬢ちゃんはハンノマの店に来てたんだぞ?次はハンノマに武器を作ってもらおうとするかもしれない」
スタスタと、ドワーフを置き去りにエルフは歩き出す。
「ま、マテ、マテマテ、マテってば!ワシを置いていくな!こう見えても、ワシは方向音痴なんじゃ!」
こう見えてって、別に方向得意にも見えないですけどね……。
「私は王都に一刻も早く行きたいんですよ」
「ワシは戻って嬢ちゃんとギルドに行きたいんじゃ!」
平行線。
と、思われたが、実際にはスタスタと王都へ向かう道を歩きながらの会話だ。
「さて、そろそろ魔力が回復しましたから、転移しましょうか」
「転移!そうじゃ、おまえ転移魔法が使えたんじゃ!さっと嬢ちゃんのところへワシを送ってくれ!」
エルフが何度目か分からないため息をついた。
「転移魔法は、行ったことのある場所、しかも30キロまでしか移動できませんよ。転移魔法陣という過去の遺跡でもあればもっと遠くへも移動することはできるでしょうが、長生きしている私でも、転移魔法陣の記憶はありません」
ドワーフが口を尖らせた。
「そんなこと知っておる。暗黒大陸にはその過去の遺跡がゴロゴロしてるっていう噂じゃろ。今はない武器もゴロゴロしてるかもしれんのじゃろ?ワシ、一度でいいから行ってみたいと思っておるんじゃ」
「ええ、私も。自分のルーツが分かるかもしれませんから、暗黒大陸などという場所があるのであれば行ってみたいですね。……あれば……ですよ」
ドワーフがニヤリと笑う。
「あるんじゃないかと、ワシは思っておる」
「何ですか、その自信は」
「伝説と言われているエルフの王も、伝説ではなく存在しておるからの。暗黒大陸もきっと、どこかにあるんじゃろう」
ドワーフの言葉に、エルフもニヤリと笑った。
「まぁ、確かに。伝説の剣といわれる類のものを作れるドワーフがいるのを私も知っていますからね。世の中の伝説と言われる物のいくつかは確かに存在しているとは思いますよ」
「じゃろ。だから、早く嬢ちゃんのところに転移させてくれ」
エルフが額を抑える。
「だからって、全然話がつながっていませんよ、バン。それに、今の今、転移魔法じゃせいぜい移動できるのが30キロだと説明したばかりですよね?」
ドワーフが地団駄を踏む。
「いやじゃ、いやじゃ。ワシ、嬢ちゃんつれて武器の登録をするんじゃ!するんじゃ!」
ああ、また我儘が始まった。
エルフが頭を抱える。
「……分かりました。では、こうしてはどうでしょう。まず、バンが1人で鍛冶ギルドに新しい武器の登録に行く。登録は仮登録ということで、嬢ちゃんのサインが入って本登録。仮登録中でも本登録時と同じだけの権利を嬢ちゃんに与えると契約魔法でギルドに誓約すればいいんじゃないですか?」
「なるほど!仮登録と契約魔法で、本登録のように扱ってもらうということか!さすが、持つべきものは賢い友達だな!」
……エルフが小さく息を吐く。
友達?そういえば、私は、いつ、この我儘なドワーフと友達になったんでしょう?
かれこれ付き合いも200年を超えて、すっかり昔のことは忘れてしまいましたが……。
「じゃあ、早く王都に行くのじゃ!行って、仮登録をさっさと済ませるぞ!ほれ、急げ、何をぼやぼやしている!」
ドワーフに言われ、エルフの額がピクリと動く。
「まったく……バンは、仕方がないやつだ……」
それでも、200年も一緒に旅をしているんだ。
嘘はつかないし、見栄も張らない。私のことを特別扱いもしない。
十分だ。十分、友達でいられるわけだ。
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